この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S3E3-5

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顔ぶれからたぶん、上院の会議室

 

シャーロックに対する処分が議論されている。なんとかシャーロックを守りたいマイクロフト、同僚がよく言うように我が国は鈍器  a blunt instrument  を必要とする一方、時には短剣が必要だ、と主張する。

この鈍器が必要だ、というのは、Yuko  Kato  さん、notfspurejamさんのブログから、「007  カジノロワイヤル」の M のセリフ。

 

 

マイクロフトは提案をする。レディスモールウッドの、非情な案ね、という言葉で、6か月後に死が待っている東欧への潜入調査だということがわかる。

 

この時に、言葉の端にでるのが、the other one もう一人のきょうだいの存在だ。 S4へ。

 

飛行場

モファットは、シャーロック、ジョン、メアリー、マイクロフト、それぞれの別れを描きわけている。

 

メアリーとシャーロックは、頬に家族のような親密なキスをすると、ハグしながら

 

シャーロック:  彼を頼むよ

メアリー:  大丈夫、困らせておくわ

Don't  worry,  I'll keep him in  trouble.

シャーロック:  いい子だ   That's  my  girl.

 

とても近しい言い方。CAMの  bad  girl と対になってるね。

 

メアリーが自分から離れると、シャーロックは一瞬、苦しげな表情になる。

 

マイクロフトは、そばで何も言わずじっとシャーロックを見つめている。

行くなと言った東欧へ、今は自分が弟を派遣することに。忸怩たる思いだ。

 

メアリーに向けるシャーロックの笑顔は、本当に素直だ。こんな笑顔は他の誰にも向けない。

この二人は腹心の友、あるいは双生児だ。互いに考えていること、感じていることがわかる。絶対的な信頼感と安心感がある。

 

シャーロックから離れたメアリー、ジョンのところへ歩いていくわずかな間、泣き出しそうな顔になる。ジョンの隣に立った時は、鎮痛極まりない表情だ。

メアリーにはシャーロックの運命がわかっている。しかし、今は、もしかしたらもう二度と会えないシャーロックとの別れの時だ。泣いてはいけない。

 

シャーロックは、マイクロフトに、ジョンと話をしたいから最後に時間をほしいと丁寧に頼む。

would  you  mind if  we  took a  moment ?

と、超低姿勢。マイクロフトはすこし困った表情だ。

 

シャーロックとジョンの二人は、なかなか目をあわさない。どう言葉をかけようか。迷いながら言葉を探す。

話をしている間、ほほえもうとするが時々できなくなる。刻々と変わる表情、一瞬ふっと瞳が曇る。6か月後の死を覚悟しているシャーロック。6か月の任務の後、どうなる?とジョンに聞かれるが、さあ  Who  knows ?  とあいまいに答えをにごす。

 

二人は最後の時間を笑顔で終らせようと努力する。なんとか相手を笑わせようと、互いを思いやる。

 

途中で出てくる言葉が、東風 East wind.

S4へ続くキーワード。

 

シャーロックは、いつもはめている黒い手袋をはずし、手を差し出す。

 

最高の日々に、ジョン

To the  very  best  of times,  John.

 

最後はジョンも悲痛な表情。マイクロフトは、何も言わず見送る。

 

そしてシャーロックはプライベートジェットに乗るが、、

 

国中のスクリーンが、モリアーティにジャックされ、離陸して4分後、機内のシャーロックにマイクロフトから電話が。

 

マイクロフト:  急に君が必要になった

シャーロック: 誰が僕を必要に?

マイクロフト:  イングランド

 

 

 S3E3は、ストーリーだけ見ると、一見スパイor  アクションドラマのような展開だが、巧みな構成の中に言葉が配置され、登場する人々の人となりや感情を描いている。

この S3E3で唯一気になったのは、CAM  が「時々使う」といっていた、記憶以外のデータは果たして例の手紙だけだったのか、メアリーに関しては本当にマインドパレスの中の記憶だけだったのか検証できていない、という点だが、

あまりの構成の見事さに、なかったことにしよう、と思ってしまう。

完成度の高さは S2E1の方が上だと思うが、ストーリー展開の面白さでは、この S3E3も負けていない。

特に最後の飛行場のシーンは、説明的な言葉を一切使わず、物語の終幕にふさわしい情感を創り出している。