この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock Rev. 6

 

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このじみーなブログを読んでくださっているみなさま、本当にありがとうございます!!

コロナ禍で生活のペースが変わってしまい、前回のアップから随分時間がたってしまいました。

どうか、あともうしばらくお付き合いくださいませ!

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*シャーロックと女性たち 

このドラマシリーズには、魅力的な女性たちが登場します。みんな、強くて個性的!

 

 

モリー

女性たちの中で、なんといっても一番人気はモリーでしょう。

登場人物の中で、一番変化が大きいのはシャーロック、そしてモリーですね。モリーの変化は、彼女自身の成長はもちろんのこと、シャーロックの変化を写す鏡になっているところがステキです。

 

モリーフーパー、モリー自身のブログによれば31歳。監察医。大学時代は友人からミスパーフェクト、と呼ばれていた秀才です。

 

モリー初登場の S1E1では、シャーロックに惹かれ、一緒にコーヒーをと誘いますが、モリーに関心のないシャーロックからは全く相手にされません。ごく普通の若い女性、私たちの周りにもいる、そんな存在です。

 

 S1E2でも、シャーロックとモリーの関係は、大きく変わりません。ここのシャーロックは、モリーの恋心を利用します。モリーは特別優秀な女性ですが、周りは天才ばかりですから普通の人になってしまいます。私たちにとって、モリーは手の届くところにいる友人のような存在に思えてきます。

 

 S2E1の印象的なクリスマスパーティのシーン。ここでも、モリーはシャーロックに会える喜びではしゃいでいる可愛らしい存在。相変わらず、シャーロックへの片思いが続いています。一方のシャーロックは少し変わってきています。以前のようにモリーは利用するだけの存在ではなく、きちんとそこにいる存在です。モリーの誠実さや率直さ、あるいは優秀さがシャーロックに伝わっていることがわかります。

 

次の登場は S2E3です。モリーはシャーロック自身も気づかない彼の内面に気づいています。

突然それを指摘されたシャーロック、その時は理解できませんが、シャーロックなりに言われたことを咀嚼しようとします。モリーの恋は受け入れませんが、モリーという存在を意識します。自分をいつも見ている人が自分にはいたことに気づきます。それを理解したシャーロックは、モリーにFallのトリックへの協力を頼みます。

ここはシャーロックの変化の描写ですが、同時にモリーの変化も描いています。モリーの成長とシャーロックの成長がリンクしていることがわかります。

 

 S3E1 では、モリーはシャーロックと共に現場におもむき、検死の助手を務めます。シャーロックが生きていることをジョンに秘密にしていたことを許していないためです。

観察力、洞察力、ともに優れているモリー。シャーロックが心から感謝するほど優秀な監察医です。その優秀さは、ジェラス?というジョンの言葉からもわかりますね。

 

S3E3では、モリーは別人のように強くなっています。 S3E1で、もうシャーロックを追わないと決めたモリー。あれから人知れず進化していました。事件のためだとといいわけするドラッグまみれのシャーロックに、三往復ビンタをくらわします。

 

 S4E2でも、モリーはドラッグまみれのシャーロックを看ることになり、死者の方が健康だと叱りつけます。シャーロックを追いかけていたモリーは、いつのまにか立場が逆転し、姉かもしくは母のような立場になっています。

 

 S4E3ではモリーについて、未婚で死について現実的で、孤独だと語られます。

彼女はおそらく天涯孤独なのですね。だからこそ、いつも誰か親密な存在を求めているのでしょう。

 

天才や超天才が登場するこのドラマシリーズの中で、モリーは普通の人。秀才で努力の人ではあるものの、私たちに近い存在です。孤独で頑張り屋、心の中に足りないものを求めていつも恋人を探しているモリー

実際に天涯孤独な人は多くないかもしれませんが、自分を天涯孤独なように感じている人は、案外多いのかもしれません。モリーへの共感はそんなところにもあるのかもしれません。

 

そして、物語の中でモリーは変わっていきますが、変わらないものがあります。それはモリーの核にあるものです。生真面目さ、高いコミュニケーション能力、他者に対する優しさ、率直さ、人として大切なものをモリーは持っています。

そんなモリーは、天才ではない私たちの、こんな風にありたいと願う存在なのかもしれません。

 

☆ハドソンさん

シャーロックとモリーの関係が物語の進行とともに変わっていくのに対し、変わらないのはハドソンさんとの関係です。

シャーロックとハドソンさんの間には、家族のような、息子と母親のような親密さと信頼関係があります。

 S1E1から、シャーロックはハドソンさんが大好き。それは双方の態度でわかります。

もう、シャーロックたら、といいながら部屋をかたっけるハドソンさん。

かたやシャーロックも、ハドソンさんには親密なキスをします。荷物がまだ片付いていないのに、すでに二人の間は親密なので、このドラマシリーズ以前に、二人の関係はすでにできていたのだろうと推察できます。

ハドソンさんとシャーロックの関係は、ハドソンさんの夫が麻薬を扱うマフィアで、シャーロックが死刑を確定したことから始まったと、後で語られます。

どうしてフロリダのハドソンさんとシャーロックが繋がったのかは、あきらかではありませんが、 シャーロックの両親がオクラホマでダンスをしているとの台詞や、お母様に言わなくちゃ、というハドソンさんの言葉から、ハドソンさんはシャーロックの母親と何か繋がりがあった、ということが想像できますが、それ以上は不明。謎です。

 

シャーロックがハドソンさんを大切にしているのは、 S2E1でよくわかります。ハドソンさんを傷つけるとは!怒りに燃えるシャーロック。

 

ハドソンさんの面目躍如は S4E2です。ストーリーがダークなので、真っ赤なアストンマーティンのハドソンさんは視覚的にも最高。しかも、シャーロックは感情的な人間だと、マイクロフトを論破するところは一つの山場です。

 

ハドソンさんはシャーロックにとって、母親のような存在。実の母親には反発しますが、ハドソンさんには素直なシャーロック。実際の母親の愛情は、支配や、時として抑圧となりがちですが。。ハドソンさんのような、血縁ではないけれど親密さで結ばれた関係は、もしかしたら支配のない愛情による結びつきの形と言えるのかもしれませんね。

 

ハドソンさんもまた孤独な人ですが、夫の残した資産でベイカー街に借家をもち、生活には困らず、悠々と人生を送っています。なかなか個性的な自分の人生にも、マフィアの夫との出会いにも別れにも悔いはありません。

シャーロックに対してもジョンに対しても、誰に対しても受容的で開放的な人柄は、明るいとはいえない登場人物の多いドラマシリーズの中で、魅力を放っています。

 

ハドソンさんの魅力は、ハドソンさん自身の明るく受容的な人柄と、シャーロックへの包容するような愛情、血縁ではないゆえに自由で抑圧のない親密さ、暖かさ、寛容さを私たちが感じるからかもしれませんね。