Sherlock S4E2-5
ベイカー街、221B
シャーロック: モリーと僕らでケーキ?
ジョン: 誕生日にはケーキだ
シャーロック:
僕は、、
こういうのもなんだけどメールのやりとりだけだ
みんな、メールくらいする
僕でさえ、あの女と
やめておこうと思っても
時々、つい
ここは、誰でもえーっと思うところ。直前で恋愛はいらないと言いながら、メールは送ってたんだね。
この部分はシャーロックとジョンの物語の仕上げにあたるから、大事なところだ。モファットは塾考してここの脚本を書いたはず。だとすると、S1からずっとそうだったように、えーっと思うところが、重要な変化を表現しているのかもしれない。
100%感情をコントロールしているのがシャーロックだ。ところが、ここではやめておこう、と思いながら、つい、と言っている。人間くさいシャーロックだ。だから、次の台詞につながる。自分も普通の人間に過ぎないと。
天才であることに変わりないが、さまざまな人との関わりや経験や喪失を経て、シャーロックはかつてのシャーロックではない。そうモファットは言いたいのかもしれない。そういうシャーロックでないと、S4E3には続かないから。
シャーロック:
こう考えるのは不愉快だけど
時々ぞっとする
僕たちはみんな結局人間にすぎないのかと
ジョン: 君でさえ Even you?
シャーロック: いや、君でさえ
No. Even you.
こんな脚本書かれたら、ホントに参る。
この二行。このわずか二つの言葉。
特にリフレインするシャーロックの Even you
には脱帽だ。脚本にも、ベネディクトにも。
私たちには、この二つの言葉で全てがわかる。あの二人が完全に戻ってきた。互いに心から尊敬しあい、信頼しあう二人が戻ってきたのだ。
シャーロックは、鹿撃ち帽を、窓辺の、もしかしたらまだアイリーンの携帯が入っているあの引き出しから出してかぶる。
「帽子」も、S4E2の最初から何回も繰り返されてきた。人々の「鹿撃ち帽のシャーロックホームズ」という期待にシャーロックは自ら応えようとしている。
このシーンはS3E1の最後のシーンと重なって見える。だが、絶望の深い穴の底から這い上がった今のシャーロックに、あの時の涙はない。
シャーロックホームズのお約束だ
シャーロックは、そうだろメアリー?
Isn't that right , Mary?
と言いながら部屋を出る。
そう、シャーロックにも、メアリーの幻が見えていたのだ。ジョンが振り返ると、もうそこにメアリーの姿はなかった。
ここで、私たちは秘密に気がつく。
それはシャーロックとメアリーとの秘密だ。S3E2でかわされたシャーロックとメアリーのサイン。それはジョンへのサインとは違って二人だけの秘密、という意味だった。
メアリーの死を受け入れることのできなかったシャーロックとジョン。二人の前にメアリーは幻として現れ、それぞれにアドバイスをしていた。S3E2と同じように、メアリーがジョンにアドバイスする姿だけが私たちに見え、メアリーがシャーロックにアドバイスする姿は、私たちには見えなかったのだ。
S3E1で始まり、S3E2で完成したシャーロック、ジョン、メアリーの三人の関係。S4E2では、メアリーは、メアリーが愛する二人の男を絶望から救い、シャーロックとジョンの二人をメアリーの愛で再び結びつけた。それはS4E1の最後で、メアリーが最後の力を振り絞って二人に語りかけたことからもわかる。
メアリーの死を現実として受け入れ、再び
昔の二人が戻ってきた今、メアリーは役割を終え、もう二度と幻として二人の前に現れることはない。
S3E1から始まった三人の物語は、ここでやっと終わる。
ここからはエピローグ。
新しいセラピストの家
ジョンがセラピーを受けている。
ベイカー街、221B
依頼人をboringと言って追い出すシャーロック。シャーロックは、フェイスが残していったメモを見つける。
ディオゲネスクラブのマイクロフトの部屋
レディスモールウッドは、マイクロフトに、プライベートの電話番号を書いたメモを渡して帰る。
前の監視室のシーンでも、レディスモールウッドの方が積極的だったからね。
ベイカー街、221B
フェイスのメモを見つけたシャーロック。
現実だった She was real.
ディオゲネスクラブ
マイクロフトは、結局、レディスモールウッドのメモをとっておくことに。メモが挟んであった手帳には
シェリンフォードに電話、午後2時、の文字。S4E3へ。
セラピストの家
セラピスト:
もう一人の兄弟の話を
秘密の兄弟よ
シャーロックとは
一晩中一緒にいたわ
楽しかった
チップスを食べた
私にフェイスのメモをくれたのはスミス。共通の友だちが引き合わせてくれた
シャーロックからあのメモのことは聞いてる?
私、いくつか手がかりをつけ加えておいたの
彼はなかなか優秀
でも大きなヒントに気づかなかった
ベイカー街、221B
シャーロックはフェイスのメモにライトをあてる。するとそこに会いたかった?
MISS ME?
の文字が浮かびあがる。
セラピストの家
セラピストが茶色のカラーコンタクトを外すと青い目に。
彼、チップスの好みはいいわね。
セラピストは耳につけた花を見せる。
あなたは優しそうだった
セラピストはバスの中の女性だった。
突然、セラピストはジョンに銃をむける。
セラピストは、ユーラス Eurus となのる。ギリシャ語で東風。
S3E3の最後で出てきた「東風」は、ユーラスを指していた。
原作「最後の挨拶」の中で、シャーロック・ホームズは、ジョン・ワトソンにこんな風に言っている。
東の風 ( 訳注 イギリスでは東の風は冷たく不快な風) になるね、ワトソン君
そんなことはなかろう。ひどく暖かいもの
相変わらずだねえ、ワトソン君は。時代は移ってゆくけれど、君はいつまでも同じだ。というものの、東の風はくるのだ。いままでイギリスに吹いたことがない風がね
延原謙訳「最後の挨拶」『シャーロック・ホームズ 最後の挨拶』新潮文庫
ギリシャ神話の中で、ユーラスはあまり愉快な性格ではない。
ユーラスは、ギリシャ神話の風の神(アネモイ)の一人で不吉な東風を表す神。暖気と雨を運んでくる (Wikipediaより)
ユーラス: 気がつかなかったの? シャーロックの秘密の兄弟は妹かもしれないって
東風 = ユーラス。マイクロフトとシャーロックには妹がいた。
せっかく生まれた女の子にこんな不吉な名前をつけるとは、シャーロックの両親はかなり個性的だ。
今、おかしな顔をしたと言って、ユーラスは
ジョンに銃を向け発砲する。
大丈夫か?! ジョン。
S4E3へ続く。