この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S2E3-2

 

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イカー街221B

 

 ジョンから「モリアーティ無罪」の電話をうけたシャーロック。

お客を迎えるためにお茶の準備。このティセット、Home Sweet Home、絵柄はUK and Ireland。もちろんミルクティ。

 

お茶の用意の後は、満を持してヴァイオリンを弾いてお客を待つ。

モリアーティが階段の途中までくると、シャーロックが気づいて一瞬ヴァイオリンの音がとまる。また弾き出すとモリアーティが階段をあがる。ここはラスボーン版の演出をそのままいかしたとゲイテイスがS2E2のコメンタリ-で説明。

 

 

ここでシャーロックが弾いているのが、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ

第1番ト短調 BWV1001

シャーロックがバッハをひくのはここが初めて。Reichenbachつながり?BACHは小川。あるいは1001の数字のほうか。バイナリーコード?

 

二人の天才の会話は、超スリリング。そして二人の俳優の視線の変化がまた見事。

 

座ってもいい?May I? とモリアーティが言うと、シャーロックはジョンの椅子を指す。モリアーティはそれを無視してシャーロックの椅子に。むっとするシャーロック。

 

モリアーティ:おとぎ話には悪役がいる

君は僕を必要としている

だって僕らは似ているから

君が退屈だってこと以外は

君は天使の側にいるからね

 

シャーロック:もちろん僕は陪審側だ

 

S1E3ではヒーローにならないと宣言したシャーロックだったが。。。

 

モリアーティは、陪審員がとまるホテルのケーブルテレビのネットワークに侵入して、彼らの弱点 pressure point=守りたいもの、を見せて無罪の判決をださせた、と説明する。

 

人は、守りたいものために最善をつくす。終盤への伏線。

 

シャーロック:僕を燃やすのか?

burn me?

この言葉はS1E3でモリアーテイが言った言葉、 l’ll  burn you.の裏返し。

 

モリアーティ:そこが問題だ

これは  the final problem, 何だかわかる?

 

どこでも入れるコンピューターコードがあると言うモリアーティ。モリアーティは膝を指で規則的にうちはじめる。

 

普通の人々は可愛いね、ジョンのような、とモリアーティ。この時のシャ-ロックのただならぬ視線で、シャーロックがこの言葉の特別な意味を見逃していないことがわかる。

 

モリアーティ:僕は問題を解決したいんだ

僕らの問題、最後の問題を

すぐに始まるよ、シャ-ロック、転落が

 

落下そして評判落としのダブルミーニング、転落。

 

モリアーティが帰り際にいうのが

I owe you a fall. 僕には君を落下させる義務がある

I owe you.   君には借りがある=借りは返す

そしてリンゴにはI. O. U.の文字。Iowe you.

 

I  owe  you  a  fall

の意味をどうとるか。a fallは多義的だ。

 

君には、滝の借りがある。

君には、落下の借りがある。

上記のように、・・・の義務がある、ともとれる。おそらく意味を重ねて使っている。

いずれにせよ、原作「最後の事件」でモリアーティは滝に落ちて死ぬ。

しかもIOUの文字を書いたのは赤いリンゴ。

リンゴは人間の原罪の隠喩。すると、Sinnermanとは?

 

二か月後。

またもや銀行でカードがきかなくなるジョン。今度はマイクロフトの差し金。迎えの車でそれを察する。

喋ってはいけないディオゲネス・クラブで、ジョンはマイクロフトはどこ?と言って守衛に連行される。

 

デイオゲネス・クラブは、原作では、マイクロフトが作ったロンドン一風変りなクラブと説明されている。

部屋でマイクロフトは、ジョンに The Sun を見せる。そこにはキティ・ライリーの独占記事。

トップ記事の見出しは、

 

SERLOCKー衝撃の真実

サブタイトルー親しい友人Richard Brookが全てを語る

本文ーシャーロックホームズは、本日、詐欺師であることが判明した

 

マイクロフトは、ジョンに四人の選りすぐりの殺し屋がベーカー街に集結していることを知らせ、シャ-ロックの安全に気をくばるようにいう。私たち兄弟にはいろいろ遺恨が、と苦い顔のマイクロフト。

いまや二人はシャーロックの後見共同チームに。

 

イカー街221B

ジョンが帰るとドアの外にパン屑の入った封筒が届けられている。赤い蝋印。部屋に戻るとレストレードとサリーが事件の依頼に来ている。

駐米イギリス大使のこども、兄妹二人の誘拐事件。大使からの指名による依頼だ。

221Bの部屋を映しだしている隠しカメラの映像が映る。

 

St Aldate's School 

アッパーの子どもの多くは、6歳くらいから寄宿舎のあるボーデイングスクールに入る。

妹の部屋には封筒に入ったグリム童話の本。221Bに届いた封筒と同じ赤い蝋印が押してある。

兄の部屋にあった油のついている足跡が廊下に残っている。思わずフフンと楽し気な声をだすシャ-ロック。誘拐事件だ、笑顔はダメとジョンからチエックが入る。

 

バーツ

靴底に付着した油から犯人の手がかりを探そうとするシャーロックは、モリーに分析の協力を頼む。

アルカリ性と、モリ-が言うと、ありがとうジョン、と答えるシャーロック。

 

モリーは顕微鏡を覗くシャーロックにやや強引に話しかける。

 

モリー:あなたは父に似てる

死期がせまっても明るかったけれど誰もいない時はさびしそうだった

あなたも同じ、ジョンが見ていない時は寂しそうだわ

シャーロック:君が見てるじゃないか

モリー:私は数に含まれてないから

I don’t count.

 

意表をつかれるシャーロック、何を言われているかわからない。あらためて、モリーをちゃんと見つめる。

 

モリー:もし私にできることがあって、それが必要なら言ってね

 

シャーロックは何を言われているのかわからずに、

 

シャーロック:な、何を僕が君から必要とするだろう

モリー:たぶんあなたが言えるのは「ありがとう」ね

 

わけがわからないまま、シャーロックは、ありがとうと。

 

モリーは愛するシャーロックのことをよく見ている。シャーロック自身が気づこうとしない内面を理解している。モリーのシャーロックへの理解は、S3以降もドラマの一つの軸となっていく。

 

S2E3ではもちろん、この後も重要な役割を担う。モリーの誠実さはずっと変わらない。打算とか計算とは無縁のところでシャ-ロックを見つめ続ける。シャーロックが認める女性像とは違うので、シャーロックの目に入らないのだが。。。モリー自身がI don’t count  と言っているように。

 

シャーロックが変わっていく過程で、モリーを見る目やモリーとの関係も変わる。同時にシャ-ロック自身が自分の中の "感情" を理解していく。

シャ-ロックは彼女の魅力に気づかなくても、みんな聡明で誠実なモリーが大好きだ。