SherlockS2E3-1
シーズン2 エピソード3
The Reichenbach Fall
脚本:スティ-ヴ・トンプソン
監督:トビー・ヘインズ
S2の最終話であると同時に、S1E1から積みあげられてきた言葉、プロット、伏線、全てが集約する前半6話の最終話。それだけに複雑にテーマが絡み合い、読み解くのが難しい。
原題 The Reichenbach Fall
NHKの邦題はライヘンバッハ・ヒーロー。
ドラマ冒頭にでてくる絵がターナーの「ライヘンバッハの滝」。Fall=「滝」。
原作「最後の事件」は、スイスにあるライヘンバッハの滝にホームズが落ち、死んだと思われる、というところで終わる。ドイルが、物語の中でホームズを復活させたのは10年後。このS2E3も、シャーロックが生きていることが最後の最後に視聴者にはわかる。
また、ドラマの終盤のシーン、シャーロックがバーツの屋上から落ちる。このことを意味するFall=「落下」。
さらに加えて、Yuko Katoさんによればfallには、「評判落とし」という意味がある。モリアーティによって用意されたいくつかのしかけによって、シャーロックの信用失墜に至るプロセスがこのS2E3のストーリーの中心になる。よってFall =「評判落とし」。
Fallにはこのように三重の意味がこめられている。
なのでこのブログでは、タイトルはまたもや原題のままにしておこう。
ターナーの絵「ライヘンバッハの滝」の盗難事件、銀行頭取誘拐事件、リコレッティ逮捕への協力、立て続けにショーロックの功績がたたえられるが、社交辞令でお礼を言うとか、その時の雰囲気で言葉を選ぶことができないシャーロック、その都度、ジョンが横から助言ないし指示を出してその場をしのぐ。冷笑するサリーとアンダーソン。
うまく言葉を使えないのは、できないからではない。そうしようとしないから。必要だと思わないから。相手の立場とか気持とかどうでもいいと思っている傲慢さ。これら全て伏線。
事件解決は新聞にも大きくのり、シャーロックとジョンには新聞やネット上のあだながつけられる。Daily Star のタイトルは ”Boffin” Sherlock、boffin は頭はいいけどつまらないとかオタクとか揶揄的な意味。つまり皮肉っている。サブタイトルがヒーロー探偵。マスヨミの裏表。
ジョンは ”Bachelor” Watson。Bachelor はもちろん独身者だが、confirmedとなると二人はゲイでしょ、という意味にもとれる。
もてはやされることを警戒するジョン。
11:00am、モリアーティによって三件の犯罪が同時に起こる。ロンドン塔の宝物館、ペンタルヴィル刑務所、イングランド銀行の金庫。いずれも最も警備の厳しい場所だ。
数台のパトカーと共にレストレードがロンドン塔に到着。彼の車はシルバーのBM。
そこには宝物館の強化ガラスを破り、王冠をかぶって玉座に座るモリアーテイ、なんのために? 王冠を盗むことでも銀行の紙幣を盗むためでもなく、自分の能力を世に知らしめるため、そしてシャーロックをひっぱりだすために。
ここの宝物館のシーンでモリアーティがリズムにあわせて踊っていたのは、ロッシーニの歌劇「泥棒かささぎ」序曲。
ベイカー街221B
シャーロックにメールが届く。
Come and Play
Tower Hill
Jim Moriaty ×
come and play は、モリアーティの一方的なゲーム開始の合図。さあ、一緒に遊ぼう。どちらが強いのか、そして負けた方は死ぬんだよね、と。
S2E1ではシャーロックへのモリーのクリスマスカードには××× が三つ。大好き!という感じ。ここのモリアーティの× は、やや控えめに。S1E3でモリアーティがシャーロックに呼びかけたHellow sexy と、ほぼ同じ意味か。
タワーへ羽着したシャーロックとジョン。
監視カメラにうつるように書いてあった文字は。。GET SHERLOCK
Nina Simoneの曲=Sinnerman(罪人)が流れる。
Oh sinnerman,
where you gonna run to Sinnerman,
where you gonna run to All on that day
Well I run to the rock,
please hide me I run to the rock,
please hide me All on that day
Well the rock cried out,
I can’t hide you The rock cried out,
I can’t hide you
岩にいっても海にいっても川にいっても隠れることのできない罪人
神に悪魔のところに行け、と言われるが、
最後は神に助けを求める・・・
この曲は、宗教的な意味合いが強い。その意味を考えなくてもストーリーは追えるが、キリスト教的な文化圏にいる人にとっては重いだろう。
シャ-ロックは、検察側の鑑定証人として法廷に召喚される。
221Bのドアをあけて外へ出ようとしているシャーロックとジョン。外には大勢の記者たちのカメラが待ちかまえている。
ジョン:いいか? Ready?
シャーロック:ああ Yes
ここの二人の間合い、なんともいえない。ジョンはシャーロックの兄か父のよう。シャーロックを守ろうとしている。
法廷へ向かう車の中
ジョン:憶えておくんだ
シャーロック:うん
ジョン:利口ぶった話し方はせず
シャーロック:いやだ
ジョン:簡潔に
シャーロック:知的では駄目なのか?
ジョン:ひけらかしはダメってこと
シャ-ロック:僕らしくするさ
ジョン:聞いてるのかあ
法廷前
レポーターが並ぶ
BBCレポーター:オールドベイリー裁判所において、ライヘンバッハ・ヒーロー、シャーロックホームズ氏を・・
法廷の男性トイレ
The Sunのキテイ・ライリーがシャーロックに近づこうとする。
おそらくS2E3でもっとも嫌な人間に描かれているキテイ、頭が悪く野心だけは大きい。
オールド・ベイリー、10番法廷
シャーロックは、ジョンのあらゆる助言に反して自分の自己顕示欲のおもむくままにしゃべり、裁判官の怒りをかう。そして独房へ。
陪審はモリアーテイに無罪を言い渡す。。
モリアーティは、弁護人の弁護なしに無罪を勝ちとり、釈放される。