Sherlock S1E2-2
シャド・サンダーソン投資銀行ー続き
前会長の目に暗号が書かれているのを見せるセバスチャン。サー・ウイリアム・シャド=The Blind banker. この銀行の創始者だ。ちなみに毎回ドラマの最初のクレジットにはサー・コナン・ドイルと、ちゃんと記されている。ドイルは、貴族ではないので、当然ナイト爵。いわゆる名誉称号だ。
投資銀行を出ながら、なぜ海外に二回いったのか、わかったのか説明するシャーロック。セバスチャンのロレックスから。発売されたばかりだということもちゃんとチェック。有能なトレーダーの時計はロレックス!
ここで、シャーロックが、高価なブランド品をよく知っているのがわかる。シャーロックの着ているベルスタッフのコート、スペンサー・ハートのスーツ、D&Gのシャツ。靴はサンローラン。時計はイギリスの老舗ロータリー。
どれも高価でおしゃれ。フラットシェアをするから節約はするけどお金には困っていない。S3E1では「このシャツどう?」って鏡を見ながらマイクロフトに聞いていた。ただし、いわゆるブランド好きというのではなく、膨大な知識の蓄積の中で、いいものを選んで身につける選択眼を持っている。コメンタリーでも、洗練されている、と言ってたしね。
同時にシャーロックが決してネクタイをしないのもポイント。ネクタイはもともと貴族の首元を飾っていた布が時代と共に変形してきたものだし、且つ、自分が帰属している社会を表しているからね。
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マイクロフトの服装についての説明を見かけたので、補足しておこう。なるほどね。
「マイクロフトのスーツは、ロンドンで名門テーラーが集まるサヴィル・ロウ、しかもその一番地に鎮座するギーブス&ホークスです。エスタブリッシュであることを表現するのに最適なスーツです。」
中野香織「ホームズの英国的な変人ファッション」『kotoba』2019年夏号、集英社。
2019年12月6日、追記
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ヴァン・クーンの部屋のシーンの後、
レストランのトイレット
ヴァン・クーンのことを聞き、
セバスチャンは、Harrow. Oxford. Very bright guy.と。
これを言うための Eton。字幕では、高学歴、となっていたけれど、これだけではセバスチャンの、嫌なヤツ感がわからない。
セバスチャンはここで、ヴァン・クーンはハーロウ校からオックスフォード卒と言っていて、自分はイートン校だから別格、と言外に言おうとしている。それほどある種の人々にとってイートン校は特別だし、オックスフォードより意味がある。オックスフォードには公立校からも学生が来る(私も一人、知っている) 。 イートンは生まれながらの宿命、イギリスをしょって立つ運命みたいな感じなのだろう。
この後、セバスチャンは警察も会長もヴァン・クーンは自殺だと言っているから、頼んだことだけやれ、余計なことをするなと。セバスチャン= The Blind Banker
ポーカーフェイスながら、ムカッときているシャーロック。すかさず、ジョンが銀行家はみんな嫌なヤツだとフォロー。ジョン、いいヤツだ。
シャーロックはジョンと共に黄色のペンキを調べにいく。二人はトラファルガー広場を突っ切って歩く。
暗号の話の後、どこへいくんだいとジョン。
I need some advice. 助言がいる、とシャーッロク。What? Sorry? え、なんだって??とジョン。するとシャーロックは、ちゃんと聞くんだ、僕はくりかえさない。
最初にこのシーンを見た時は、シャーロックはえらく傲慢だと思った。だがちょっと違う。ジョンはシャーロックが need some advice と言ったのでびっくりした。あのシャーロックが教えてもらうって?シャーロックはジョンがそう感じたことを感じて、ちょっとごまかす。それが I'm not saying it again. そこでジョンは You need adviceと念をおすように言う。ここでスクリプトにはAbroad smileとある。ジョンはシャーロックにもわからないことがある、やった!という感じなのだ。
そして、次にシャーロックが I need to talk to an expert. と言うから、見ているほうはてっきりナショナル・ギャラリーへ入ると思う。しかしシャ-ロックはくるりときびすを返してナショナルギャラリーの前を折れ、建物の裏にでる。すると、そこには絵の専門家=いかにもアンダーグラウンドの怒れる若者、ラズが。
ここの場面転換は本当に見事だ!見るものを裏切る心地よさ。
このドラマシリーズはここだけでなく、場面転換が美しい。違う場面が交互に描かれたり、関連するシーン、涙から雨と、つながれていたり。中でもこのナショナルギャラリー前のシーンは、単に見るものの予想と違った場所へ行くというだけでなく、イギリスを代表する歴史的、国家規模のハイカルチャーからアンダーカルチャーへ、という裏切り方が本当に素晴らしい。壮大なアイロニー。こんなシーンを作れるチームを尊敬してしまう。
その3に続きます。