この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S1E2-1

シーズン1 エピソード2

The Blind Banker

 

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脚本:スティーブ・トンプソン

監督 : ユーロス・リン

 

NHKの邦題は「死を呼ぶ暗号」、しかし、これだと原題に含まれる意味を見失ってしまう。

原題は、目に暗号を書かれた被害者のbanker、事件に関与して殺されたbanker、シャーロックに事件を依頼してきたbanker、三人がblind  だという意味だと思う。

ここでのタイトルは、誰にも文句を言われないのを幸い、原題のままにしておこう。

 

S1E2は、シャーロックとジョンが探りあいながら距離を縮めていく過程を描いていている。どのシーズンでもそうだが1と3をつなぐE2は、「シャーロックとジョンの物語」にとってはとても重要だ。シャーロックの変化と、二人の関係の変化を表現しているからだ。

この回は脚本家が違うせいか、ちょっと説明不足の感もあるのだが、見ている方が違和感を感じる場所が、実は大事なポイントのように思う。

 

 

イカー街221B

刺客(シーク教徒の戦士、完全な伝統的戦闘服とスクリプトに。これは説明されないとわからない!!!)に襲われるシャーロックと、スーパー(Tesco Extra)のレジのマシンと格闘するジョンが交互に。

敵と格闘した後、すぐ服を気にするシャーロック。

自分のカードで買い物ができなかったジョン。シャーロックのカードで買い物をしてくる。最初、マイクロフトの陰謀でジョンが買い物ができなかったのかと思ったが、ここは、やはりジョンの銀行残高が足りないという描写。ここが、この後のジョンの求職活動とつながっていく。

 

 また後でふれようと思うが、ここでシャーロックの出自が漠然と示されている。S1E1でサリーが言っていたように、シャーロックは警察から事件を依頼されて解決しても報酬を受け取っていない。この後のシーンで大学時代の友人セバスチャンからの前金もシャーロックは要らないという。

 

ジョンが書くブログが有名になり、事件の依頼も徐々にふえていくが最初はそんなに依頼はなかったはず。なのに経済的には困っていない。ジョンはハリーはいるが経済的援助はない。

 

シャーロックの出自は最終的にはS4E3で明らかになるが、ここではまだなんとなくアッパーミドルかアッパーかという感じだ。

一方のジョンは軍隊では大尉だったので階級はかなり上だが、現在経済的に困っていることからおそらくミドルの出身ということがわかる。

 

アッパー(貴族)か、ミドル(資本家階級)かという差は小さくない。

私が知っているのは1990年代前半のイギリスなので今はだいぶ違うかもしれない。

 

1990年代後半のブレア政権の時に、貴族の相続税率を90%まであげ、貴族は壊滅的な打撃をうけたと聞く。なので、生計がなりたたなくなった貴族が没落し、成功したミドルが爵位を得て、名目上の貴族になる、というのは多かったと思う。

 

 しかしもともとのアッパーとミドルの精神構造はまったく違う。またミドルとロウワー(労働者階級)もまた階級の区切りは強固で、超えることは自分の階級の否定につながる。ロウワーからミドルにあがることは決して名誉なことではない。

 

今はだいぶ変わっているのだろうが、その頃は土地は基本的にアッパーの所有だった。町に住む人々は、貴族に地代を払いその上に家を買ったり借りたりしていた。

私が住んでいたイングランド北部のシェフィールドという町の郊外の有名なChatsworthチャッツワース。その館の主がデボンシャー公爵で、広大な土地を所有していた。

だから土地騰貴が起こらないのだと、日本の戦後の農地解放と比較してある意味感心したことを思いだす。

 

シャド・サンダーソン投資銀行

実際は、シティのタワー42。向かい側にガーキン(きゅうりのピクルスに似ているのでこう呼ばれるそう)が見える。

シティはロンドン発祥の地、古い建物と新しい高層ビル群が並ぶのが新鮮な魅力だ。ただ、それはロンドンがイギリスの中でも特殊だということでもある。ロンドン以外で出会った人のすべてが、ロンドンはイギリスではない、と口をそろえて言っていた。

 

シャーロック、ジョン、セバステイアン三人の最初の会話。

三人それぞれのリアクションが面白いが、とにかく場面転換が早いので見ているのが大変。

 

セバスチャン登場のシーンでは、スクリプトには、

He has that floppy hair that bellows ”Eton”.

と書かれていて、イートン校出身となっている。が、セリフには何もない。ネクタイの柄で分かるのかと思い、だいぶ調べてみたが、たどりつけなかった。どなたかご存じだったら教えてください。

 

シャーロックが「友人のジョン・ワトソン」と紹介すると、セバスチャンはちょっと皮肉っぽく意外だ、という表情。するとジョンは「同僚だ」と。

 

この時ジョンはシャーロックをちらっと見る。どうだ!?って感じか。シャーッロックは視線を下に。あれ、しまったかな?というジョンの表情。この時、シャーロックはセバスチャンの時計を見ていたのが後でわかる。 

 

事件の説明をするセバスチャン。大学時代を振り返り、trick奇術をやっていたと。We hated him. みんなが嫌っていた、とも。Hateは、かなり強い言葉だ。一人孤立していた学生時代のシャーロックの姿がうかんでくる。

 

このあたりの会話ではシャーロックはずっと固い表情だ。セバスチャンは、事件の解明のために依頼はしているが自分をうけいれていない。それを感じるから、表情は硬い。なぜ月に二回も海外にでかけたのか、がわかったのか、説明する気にならない。

 その2に続きます。