この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S1E2-3

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この後ラズが案内するのが、

サンスバンクアンダークロフト(サウスバンクスケートパーク)

2010年代前半、大きな文化運動の基地となった。スクリプトにはUnderneath theHayward gallery とだけある。ロンドンのハイカルチャーの一角を占めるヘイワードギャラリーの地下にスケートボーダーやグラフィックアーテイストたちの聖地がある!!

パイロット版のコメンタリーで製作・総指揮のベリル・ヴァーチュー は、ロンドンに住んでいてもこの場所のことを知らなかったと言っていた。イギリスの文化は交差しない。それぞれの階級が自分の文化に誇りをもっているからだ。アッパーはもちろんこと、ミドルがアンダーカルチャーに関心をもたないのが普通だ。学生や映像、アート関係の人とかはその限りではないだろうが。

シティでは大英帝国を象徴する歴史的建物と近未来的な建物が隣接する。ロンドンの過去と現在。社会の厳しい階層性。このドラマでは、それらを何一つ否定することなく、あるがままに美しい映像で見せてくれている。

 

 

場面は少し戻り、

スコットランドヤード

シャーロックとジョン、デイモック警部。

シャーッロクは尊大だ。ディモックもシャーロックの言うことを信じていない様子がありあり。だからこそ、シャーロックは僕の言うことを神託as a gospelと思って捜査すれば早いのにと言う。

その後で再びジョンがディモックを訪れる。この時、ジョンは、誰がなんと言おうと、僕は100%あなたの見方です。ディモックが、シャーロックは無礼だArrogantというと、ジョンは(心から驚いて、とスクリプトに)他の人はもっと悪く言ってます、と。

これでころっと懐柔されたのか、ディモックは証拠の手帳をジョンに渡す。この後、シャーッロクとジョンが同じ場所を探していて、ジョンが手帳をもっているため早く探しあてる。

同じトーンの描写がもう一度続く。

黄色いペンキで書かれた暗号をジョンが先に探しあてる。しかしジョンがシャーロックを現場に連れてきた時には既に消されている。必死で思い出せ、とせまるシャーロックにジョンは携帯でとった写真を見せる。虚をつかれるシャーロック。

 

バーツ

ヴァン・クーンと、ルーキスの遺体をデイモック に見せたいシャーロック。もう書類処理は終わっているとモリーは答える。

She dithers–ought  to say ‘no’ —wants  to say 'yes’, because it’s him.

揺れるモリーの片思い。

ここで冷酷シャーロック。髪型変えた?こっちのほうが似合ってると。And he’s got her.

シャーロック、女子の恋心を利用してはいけません。モリーの表情が何とも言えず可愛い。利用されていることはわかっているけど、自分の気持はどうしようもない。モリーは名門聖バソロミュ-病院のれっきとした検死医。エリートでありながら、誠実さや純情さをあわせもつ希有な存在として描かれている。女性にファンが多いのも当然だ。社会的に重要な仕事をしながらこんなナチュラルさを忘れずにいたい、という現代の若い女性たちの憧れを反映している。

 

イカー街221B

サーカスから帰ってほっと一息

ハドソンさん、真夜中のパンチとおつまみサービス。親切すぎる大家さん再び。このあとジョンとサラは拉致されてしまう。

 

ロンドンA―Zの地図で暗号をとき、盗まれたのは900万ポンドの翡翠の髪飾りとわかる。盗んだのはヴァン・クーンだが彼はその価値を知らずに、愛人の秘書に大連土産として渡す。ヴァン・クーン=The Blind Banker

 

シァド・サンダーソン投資銀行

犯人の侵入経路がバルコニーからと解明し、

20000ポンドのチェックをセバスチャンからしっかり受け取るジョン。対策は、窓に板をとりつけたら、と。

 

このS1E2は、シャーロックとジョンの物語から見ると、ジョンの存在感が増しているのが感じられる。手帳と写真の件。シャーロックはスーリンの家で殺されそうになり、ジョン、ジョンと叫ぶ。S1E1ではひたすらシャーロックの能力に舌を巻いていたジョンだが、この回では次第にシャーロックもジョンをなくてはならない存在として感じてくるようになる、その過程を描いているように思う。天才ではないが、誠実で有能なドクター、ジョンがいつのまにかシャーロックにとっても大事な人になってきている。S1E1でも書いたが、天才が凡才をそばに置くはずがないのだ。シャーロックの側にいるから引き立て役に見えるが、ジョンもまた誠実な人柄を含めて優れた人物なのだ。

 

この回は、推理作品としてまとまっている。一つづつ推理を進めて真実を突き止めていく過程は推理ものの王道だ。がゆえに、逆に細かい点が気になる。警察が第一級の証拠品である被害者の手帳を部外者に渡すか?とか、最初に投資銀行で暗号の写真をバシャバシャとっていたシャーロックが、線路沿いで写真をとることを思いつかないはずはない、とか。

また悪の親玉、シャン将軍の背景が全く描かれていないのも不思議だ。

もう少し言うと未知の異文化がそれ自体で答えになってしまっているという気もする。中国に続き、この後は東欧が未知なる世界という描き方をすることで、説明のいらないブラックホールになってしまっているという感がぬぐえない。

それもまた、イギリスやヨーロッパの現状を反映しているのかもしれない。