この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S1E1-3 ver.2

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ロンドンの路地

この後は、ノーサランバン通り22に停まったタクシーを追いかけてロンドンの路地を全速力で走り回る二人。

シャーロックは、Come on John.

このフレーズも、ここで最初に使われる。

 

 

信号や道路標識もシンクロ。ジョンはシャ-ロックと一緒に走っている。離れた屋根にも飛び移る。杖をもたずに。

 

タクシーに追いついたところで、道路にENDの文字。客はロサンジェルスから来たばかりと分かり、二人はベイカー街へまた走って帰る。

 

イカー街221  一階の廊下

 

ジョン:  こんなバカをやったのは初めてだ

シャーロック:  アフガニスタンへいっただろう

ジョン:   あれは任務だ

 

二人で顔を見合わせて笑う。

 

ジョン: なぜ店に行った?

シャーロック: 時間つぶしと、あることを確かめに。

君だ。ハドソンさん、ドクター・ワトソンが入居をきめた

 

そこへアンジェロがシャーロックからメールがきたからと杖を持ってくる。ジョンにほほえみを向けるシャーロック。

ジョンは、シャーロックが心遣いをみせる存在になってきている。

シャーロックのコートは、階段の手すりに。

 

イカー街221B

スコットランドヤードによってドラッグの捜索が行われている。

シャーロックとレストレードの様子から、シャーロックが以前ドラッグをやっていたことがわかる。

 

レストレードは、スコットランドヤードの中ではただ一人シャーロックを理解し信頼している。

レストレードは50歳くらい。イケメン、ルパートの実年齢に近い? 部下たちが、シャーロックを敵視し嫌っている中で、シャーロックの能力を認めて見守っている。

 

アンダーソンは、犯人が持ち去った荷物がサイコパス psychopath  の部屋にあった方が問題だ、と。

サイコパスは、字幕では「イカレやろう」となっていた。吹き替えでは「変質者」に。

 

これに対して、シャーロックは、僕は高機能ソシオパス a high-functioning sociopath だと応酬する。

こちらは、字幕では「社会病質者」になっていた。吹き替えでは「高機能社会不適応者」に。

 

社会病質者、では意味がよくわからない。

吹き替えの方が漠然とだが意味が想像できる。

しかし、シャーロックが使うソシオパスの意味は、ドラマシリーズ全体の中で明らかになっていくから、ここではソシオパスのままにしておくことにしよう。

 

レストレードは、ピンク色のコートの女性が書いたレイチェルという名前が、14年前に死産で生まれた娘の名前だと知らせる。

 

シャーロックは、被害者が携帯をわざと犯人のもとにのこしたと気づく。レイチェルは、パスワードだった。

位置情報によって、被害者のスマートフォンは、ベイカー街221にあるとわかる。

 

タクシーの運転手が階段を上がり、221Bの入り口に立っている。手には、ピンク色のスマートフォン

 

シャーロックの携帯に、一緒に来い、とメール。運転手の後についていくシャーロック。

 

イカー街、221の建物の外の道

タクシー運転手、ジェファーソン・ホープがタクシーの前に立っている。

ジェファーソン・ホープは、原作『緋色の研究』と犯人と同じ名前。原作では、なぜ、ジェファーソン・ホープが復讐の殺人を犯したのかという説明に、一章分を使っている。原作では犯人に同情してしまうが、ここでは犯行理由は全く違う。

 

ノーサランバン通り22に停まっていたのは、ジェファーソン・ホープの車だった。

 

ホープ : タクシー運転手は、目立たない透明人間さ

連続殺人にもってこいだ

 

自白か?と言いながら、シャーロックは、221Bの窓をチラッと見上げる。

 

シャーロックが危機を避けるには、何回かチャンスがあった。

ここが最初のチャンスだ。犯人が自分が犯人だと自白したのだから、ここで、シャーロックがレストレードをよべば、一件落着だ。

しかし、シャーロックはそうしなかった。なぜ四人も自分から自殺したのか。それを知りたい。

 

ジェファーソン・ホープも十分それをわかっている。

 

ホープ : もしあんたが今、警察を呼んだら ( 被害者に) 何を話したか教えない

なぜ死んだか知りたいだろ

 

タクシーの中

ホープ : あんたがタクシーを追って来た時、すぐに分かった

気をつけろ、と言われてたので

ファンがいるのさ

 

タクシーの中の会話では、ジェファーソン・ホープに、シャーロックの情報を提供した人物がいたことが明らかになる。答えは、最後に明らかに。

 

イカー街221B

シャーロックが出かけてしまったので、スコットランドヤードも撤収。

 

レストレードはジョンにこう言う。

 

Sherlock Holmes is  a greatman.  And I think, one day,  if we're very very lucky he might even be a good one.

 

シャーロック・ホームズはすごいヤツだ

もしも我々が幸運だったら、いつか、彼はいい人間にだってなるかもしれない

 

S4E3で物語の最後近くで、同じくレストレードが言うセリフと対になっている。

 

ローランドカー・カレッジの校舎

ここからは二人の丁々発止。言葉と表情で挑発しあう。

 

ホープ : タクシー運転手は、殺人向きの場所に詳しい

 

ジェファーソン・ホープは、机の上にカプセルの入ったガラスの小瓶を二つ置く。

 

ホープ : ファンから話を聞いてるよ

あんたは賢い。本物の天才だ

ここだけの話、みんなバカばかりだ

 

シャーロック : なるほど君も天才なのか

 

ホープ : アタリとハズレがある。アタリなら生き延びる。ハズレなら死ぬ

 

シャーロック : 見分けがつかない

 

ホープ : ゲームだ

あんたが選ぶ

あんたが、選ばないほうを俺がのむ

二人一緒に薬を飲むんだ

 

シャーロックの顔に微笑みが浮かぶ。

単なる偶然だ

 

ホープ : 偶然じゃない

チェスさ

そして、これがその一手さ

 

ジェファーソン・ホープは、二つの瓶のうち、一つをシャーロックの前に置く。

 

ホープ : さあ、好きな方を

 

シャーロック : 五分五分の偶然にかけるのは嫌だ

 

ホープ : 私には、人の考えがよめる

あんたもバカだ

 

シャーロックは、ジェファーソン・ホープについて推理を始める。

 

シャーロック : 僕から行くぞ

(ホープは)  一人暮らし

車の中には、妻を切り離した家族写真が

ということは、、子どもに会えない

離婚後、疎遠になった

子どもは妻が引き取った、とみえる

しかし、まだこどもを愛してる

 

・・・三年前に死を宣告された

 

ホープ動脈瘤が頭に

 

シャーロック: 危険な動機になるのは愛だ

子どもに関係が?

 

ホープ : さすがだ

スポンサーがついている

殺すごとに子どもたちに金が入る

 

殺人を愛する人間は、あんた以外にも大勢いる

あんたは、所詮一人に過ぎないが、彼らは

もっと大きい

誰もその名を口にしないがね

 

シャーロック : もし選ばずに立ち去ったら?

 

ジェファーソン・ホープは、銃を取り出すが、シャーロックは銃を見て微笑む。

銃は、偽物だった。

 

裁判が楽しみだ、と椅子をたち、部屋を出ようとするシャーロック。

 

ここが二回目のチャンスだ。ここで部屋を出ることもできた。

 

ホープ : しかし、どっちかわかったか?

当たりの瓶は

 

シャーロック : わかるさ、簡単だ

 

ホープ : どちらを選んでた?

勝負しよう

 

シャーロックは、一度は、ドアを開けるがこの言葉を聞いて、再びドアを閉める。

 

シャーロックは、自分の前に置かれた瓶ではなく、ジェファーソン・ホープの前の瓶を手にとる。

 

ホープ : 結果はいかに?

命を賭けるか?

 

二人がカプセルを持った時、隣の建物の窓ごしにジョンの姿が。

 

ホープ : あんたは退屈で困ってる

あんたは、賢すぎる

でも、証明できなきゃ何にもならない

 

あんたはなんでもする

退屈でなくなるためなら

 

逃げようと思えば逃げられたのに、好奇心と自分の正しさの証明のため、命を賭けて薬を飲もうとするシャーロック。

この時のシャーロックは、自分の命より、自分の正しさを確かめる方が大事だ。

 

二人がカプセルを口にしようとした時、突然、銃声がひびく。

 

銃を持ったジョンの短いカット。

 

シャーロックが銃声がした方向を見た時、もう、ジョンの姿はなかった。

 

シャーロックは、倒れているジェファーソン・ホープに向かって、カプセルを持ち、

 

シャーロック: 僕はあってたか?

こっちでいいのか?

 

と聞くが、ジェファーソン・ホープは倒れたまま答えない。

 

シャーロック: では、別の質問だ

スポンサーは誰だ?

じき死ぬって言うのに、痛い思いをしたいのか? 名前を言え

 

シャーロックは、倒れているジェファーソン・ホープの、銃で撃たれた傷を足で踏みつける。

鬼気迫る顔。

 

シャーロック : さあ、名前は?

 

ジェファーソン・ホープは、モリアーティ!と叫んでこときれる。。

 

シャーロックは冷酷だ。人の命より、自分の推理が当たっていたのか、スポンサーだという人間の名前を聞き出すことの方が大事だ。

 

ここが、モファットがおそらく一番描きたかったところだ。始まりのシャーロック。若いシャーロックの原型だ。

 

S1E1で、シャーロックの特徴は多面的に描かれている。特に前半はいろいろ散りばめられ、アンバランスな魅力となっているものの、中心はここ。

ここから物語が始まる。ここからシャーロックがどう変わっていくのか。私たちは、それを見届けることになる。ver.2なので、先のことを書くのをお許しいただきたいのだが、このシャーロックが、 S1E3の最後のシーンのシャーロックに、繋がっていく。

 

冷酷で、傲慢、人の命より自分の推理と頭脳が大事なシャーロックが、自分の命より他の人々の命を救おうとするシャーロックに変わる。そのプロセスを私たちは、 S1を通して見ていくことになる。

その後も、 S2、S3 を通してシャーロックは大きく変わっていく。その出発点になるのが、ここの、傲慢で冷酷なシャーロックだ。