この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S1E1-2 ver.2

f:id:knancy:20200306001154j:plain

 

ブリクストン 、ロリストン・ガーデンズ

立ち入り禁止のテープが貼られ、

サリー・ドノヴァン巡査部長が検問している。

 

サリー :  あら、変人さん Hellow Freak.

シャーロック:  昨夜は外泊を?

 

 

シャーロックはジョンを同僚のワトソン医師

Colleague of mine,  Dr. Watson. と紹介する。

こちら、サリー・ドノヴァン巡査部長

 

サリー:   (シャーロックに) どうやって同僚なんて見つけたの?

(ジョンに) ストーカーされた?

 

ジョンは、微妙な表情。

 

サリー:  変人、入ります Freak's here.

 

サリーがシャーロックをよく思っていないことが、この最初のシーンでわかる。

そこへ出てきた鑑識のアンダーソンも、シャーロックに対しては、悪意がむき出しに。

現場を荒らすなよ

 

シャーロック: わかってる

奥さんは長く留守に?

男性用のデオドラント。サリーと同じ香りだ

膝の状態からしてサリーは床も磨いてくれたんだろ

 

シャーロックは、ニヤリとする。

サリーと、アンダーソンは、憮然とした表情。

  

この  Freak は、日本語の変人という言葉よりもう少し強い意味がある。直訳すると奇形、変種。敷衍すると、正常と異常のボーダーという語感に近い。

この一言で、サリーのシャーロックへの悪意、強い嫌悪感が表現されている。

 

シャーロックがいう、床磨きしてたな、は

セクシャルな意味。原作でもシャーロック・ホームズは、新聞の三面記事を熟読していた。シャーロックも、そのあたりの知識はいたって豊富だ。

アンダーソンは浮気を公然と暴露され、怒り心頭に。

シャーロックのひけらかしが大好きな性格と、相手の都合などおかまいなしの傲慢さが、短いシーンで。

 

事件現場の家に入り、レストレードにはジョンを連れだ、と紹介する。  He's with me.

 

事件現場

ピンク色のコートの女性の遺体。そばには、指で書いた Rache の文字。 ドイツ語で、復讐の意味。Rache は、原作とは逆の使われ方をしているところがミソ。

 

シャーロックは、被害者が書こうとしたのは Rachel  ではないかと推理する。

 

シャーロックの解説に、ジョンは思わず

Brilliant!

Fantastic! と思わず賛辞を言う。

ごめん、黙る、と謝るジョンに

No,  it's fine. とシャーロック。

 

とても嬉しい。

 

シャーロック:  スーツケースはどこだ?

誰かが持ち去ったんだ

犯人は、もうミスをおかした

 

自分の推理に興奮して走り出していったシャーロック。ジョンは置いてきぼりにされる。

 

事件現場の家の外

サリー :  帰ったわ。あいつと友だち?

そんなはずないわよね

 

ジョン :  僕はなにものでもないよ

会ったばかりだ

 

サリー :  ならあいつには近づかないことね

謝礼も出ないのにあいつが現場にくるわけは?

好きだからよ   

彼は犯罪に興奮するの  He  gets  off on  it.

シャーロック・ホームズが人を殺す日は必ず来る。なぜなら、彼はサイコパス psychopath だから

 

このサイコパス、この後シャーロックが使うソシオパスとパラレルに使われているが、どう訳すか難しい。

字幕では「心を病んでる」と控えめに。

吹き替えでは「変質者」。

辞書通りだと「精神病質者」になる。

 

サイコパスは、サリーやアンダーソンが悪意をもって使っている言葉なので、優しい訳にする必要はないと思う。

「変質者」は明らかに語感が違う。「精神病質者」は、正確だが悪意が消えてしまう。

また、モファットが、insanity を使っていないことにも注目したい。だから「精神異常者」とすると、訳しすぎ。

なので、ここではサイコパスのままにしておこう。

 

ジョンは肯定も否定もせず考え込む様子。

 

巨大な倉庫

タクシーを拾えないまま歩くジョン。公衆電話が次々と鳴り、なかば強制的に車に乗せられる。謎の美女、アンシアがジョンを案内する。

待っていたのは、シャーロックの兄、マイクロフト 。 視聴者に、モリアーティだと誤解させようとした、とコメンタリーで。

 

マイクロフト: 怖がっていないな

ジョン : シャーロック・ホームズとの関係は?

 

マイクロフトは、シャーロックの関係者、友だちにもっとも近いものだ、と名乗る。

 

ジョン : つまり?

 

マイクロフト : 敵だ、彼にとってはね

彼は宿敵  his arch enemy というだろう

 

シャーロックからジョンへメールがくる。

都合がよければただちにベイカー街へ 

Baker Street.

Come at once

 If conveniens.

SH

 

マイクロフト: もし君がベイカー街221Bに引越すなら、君が楽に暮らせるだけの報酬をだそう

 

ジョン: 何とひきかえに?

 

マイクロフト : シャーロック・ホームズの動向を知らせるだけでいいんだ。彼が心配なのだ、いつもね

だが、事情があって、私が心配していることを彼には気づかれたくないもので

いろいろ難しいんだ

We have・・a difficult relationship.

 

またジョンにメールがくる。

都合がつかなくても、とにかく来い 

If inconvenient,

Come anyway.

SH

 

ジョン :  断る

 

マイクロフト : 昨日知り合った相手にもう忠義立てか?

心を閉ざしている trust issues と聞いたが、

よりにもよってシャーロック・ホームズに心を開く気になったとは

 

見慣れた町

シャーロック・ホームズと一緒にいれば戦場を見る

あのセラピストはクビにしろ

今、君の手は震えていない

君は、戦場を忘れたがってはいない

恋しいんだ

戻れてよかった Welcome back.

どっちの側につくか、選ぶことだ

 

マイクロフトは去る。こうもり傘を振りながら。

 

不気味な演出で、モリアーティかと思わせて意図的に怖がらせているこの場面。マイクロフトは、既にジョンのことを理解している。マイクロフトは、シャーロック以上の天才という設定だからね。

マイクロフトは本当のことを言っているのだが、いかにも不気味な敵に見えてしまう。ゲィティスのわざとらしさが、おかしくて上手い。

 

マイクロフトは、会った途端に一瞬でジョンが怖がっていないことを見抜く。ジョンは、元軍人らしく、勇敢で、沈着冷静。不気味な存在に対して一歩も引いていない。駆け引きするような姑息さとは無縁。誠実そのものだ。

 

この場面は視聴者をわざと怖がらせ面白がらせる舞台装置に目を奪われるが、実は、ジョンとマイクロフトの人となりを教えてくれている。

 

また、シャーロックからメール。

危険を覚悟しろ 

Could be dangerous.

SH

 

これはジョンには、殺し文句だ。

アンシアに住所はと聞かれ、ベイカーストリート221Bと答えるジョン。

 

その前に寄るところがあるといって、ジョンは自分の部屋に戻り、引き出しから銃を出してジーンズの背中のウエストバンドに入れる。物語の最後への伏線。

 

ジョンはアンシアに空いてる時間ある?と聞くがにべなく断られる。ジョンは女好き。

 

イカー街221B

ジョンが帰るとシャーロックはニコチンパッチを3枚腕に貼って、禁煙に耐えている。ここは原作へのオマージュ。

 

シャーロック: 携帯を貸してくれ

机の上の番号にメールを送れ

 

ジョン : 君の友だちに会った。敵だ An enemy.

シャーロック : どの敵   Which one ?

ジョン : 宿敵 Your arch-enemy と言ってたよ

 

シャーロック : 僕のスパイを頼まれたのか?

次は引き受けろ。謝礼は山分けだ

 

ジョンは、シャーロックに、ピンク色のコートの女性の携帯番号宛てにメールを書かされる。

ノーサンバランド通り22へ来てね

 

自分の携帯は使えないという理由はあるものの、事件のためなら何でもありの傍若無人

ジョンは当然怒るが、次第にシャーロックのペースに巻き込まれていく。

 

ジョンは、そこにピンク色のスーツケースがあるのに気づく。

暖炉の前でピンクのスーツケースのことについて話す二人。説明しながらシャーロックは、後向きのまま、椅子にぴょんと飛び乗る。こういうシャーロックの身体能力についはこれから何回も見せ場がある。

 

ジョン: (シャーロックは)  スーツケースは、ピンクと知ってたのか?

僕は、なぜ気がつかなかったんだ?

 

シャーロック:  それは君がバカだから

Because you're an idiot.

 

このフレーズは、そっくりそのまま物語の最後に再び使われる。このドラマシリーズでは、言葉がパズルのように物語の中にはめ込まれていて、魅了されてしまう。

 

ムカっとするジョンに、気にするな、みんな同じだから、とフォローにならないフォローをするシャーロック。

 

シャーロック: 被害者の携帯がない

犯人が持っている可能性が高い

 

すると、ジョンの携帯電話が鳴る。犯人からだ。

シャーロックは出かけようとするが、ジョンはその気配がない。

 

ジョン:  え? 一緒に来てほしいのか?

 

シャーロック: 出かける時は、連れがいた方がいい。ドクロは目立つ

 

ジョン: ドノヴァン巡査部長が君は犯罪に興奮すると

 

シャーロック:  君も危険が大好きだろう

 

自分には、聞き手が必要だと気がつき始めているシャーロック。ドクロは、amazing と言ってくれないしね。

 

ノーサンバランド通り22へ向かうシャーロックとジョン。犯人は現れないだろうというジョンに、シャーロックは、

 

頭のいい犯人ほど捕まりたがるものだ

称賛され、注目されたがっている

Appreciation !   Applause !

褒められたいのが天才の欠点だ

 

ジョンは皮肉っぽく笑う。おまえのことだろ、と心の中で。

 

シャーロック : 人通りの多い場所なのに誰も気づかなかった

目立たないうえ、簡単に信用されるのは?

 

アンジェロの店

二人は窓際の席に座って、ノーサンバランド通り22を見張る。

 

アンジェロ : キャンドルでムードを

It's more  romantic.

 

ゲイネタ再び。

 

ジョン:  彼女とかいないの?

シャーロック: いないね、興味がないから

No.  Not really my area.

 

ジョン :  ああ、そうか、彼氏がいるとか?

シャーロック :  いない

ジョン : 僕と同じで独り身か  

 

シャーロックは、ジョンの言葉の意味を探りながら、、

 

シャーロック:  ジョン、あの、僕は仕事と結婚してるようなものだから、誘ってくれて光栄だが、、

 

ジョン: 口説いてるんじゃない

なんであれ、気にしないってことだ

No, I'm  just saying,  it's all fine.

 

それに対して、シャーロックはジョンを見つめて、頷いて言う。 Good、thank you.

 

ジョンは目をむいて困惑した表情だ。

え? 今のはなに? どういう意味だ?

 

この窓辺のシーンでは、シャーロックの、人を人とも思わぬ傍若無人な天才ぶりとは少し違う部分がチラッと見える。

さらにいえば、シャーロックがジョン、と呼ぶのはここが初めて。シャーロックが、ジョンを友人、と思い始めたのがわかる大切なシーンでもある。これから始まる二人の物語を思うと、感慨深い。。。

 

その3に続きます。