Sherlock S4E2-4
ベイカー街、221B
ジョンは、メアリーのDVDを見つける。S4E1の最後で、シャーロックが見つけたDVD。ここへつながる。
マイクロフトまで追い出すハドソンさん。ここはジョンとメアリーの問題だから仕方ない。
DVDのメアリー:
あなたへの依頼よ
生涯で一番の難問かも
ジョンは、涙ぐみながらDVDを見つめる。マーティンの演技はいつもうまいが、ここも、感情の高まりや変化を僅かな目の動きで表して見事だ。
もし、私がこの世を去ったらしてほしいことがある
ジョンワトソンを救って
シャーロック
誰でも救えると思わないで
あなたしか救えない
あなたは人間全般に疎いから
私たちの大切な彼について教えてあげる
彼を救う方法もね
病室
ベッドに横たわるシャーロックの横にカルヴァートン・スミスが座っている。
どうやって入った?とシャーロック。
カルヴァートン・スミスは、
秘密のドア、私が作った棟 wing だ
そういえばジョンとコーニッシュの会話のシーンで、背後にカルヴァートン・スミス棟、と書いてあった。ここへ繋がっていた。殺人病棟だ。
建築家を次々とクビにしたから
正確な構造は私しか知らない
君に質問だ。なぜここにいる?なぜ私の巣へ来て身を投げだした?
シャーロックは、、君に殺してほしい。
ベイカー街
建物を出て携帯をかけようとしているジョン。
ハドソンさんが追いかけてきて車のキーを投げながら、車、使って!
ハドソンさん、ホントにハンサム・ウーマンだわ。
病室
シャーロック: 投薬量を4〜5倍にすれば
1時間以内に僕はショック死する
カルヴァートン・スミスに、死ぬ前の気分を教えてくれと言われ、僕は死ぬのが怖い、死にたくない、とシャーロックの声が震える。
シャーロックが、僕は・・死にたくないんだ、と言いながら涙ぐむのは演技。カルヴァートン・スミスの殺人衝動を確実にするためだ。
点滴の量を増やすカルヴァートン・スミス。
アストン・マーチンの車内
ジョンは、レストレードに電話してシャーロックがあぶないと伝える。
警官がいるのに、と不審がるレストレードに、
分からないが、メアリーが遺言を、とジョン。
DVDのメアリー:
ジョンは救いの手を受け入れない
でも彼が絶対に拒絶できないことを教えるわ
病室
スミス: なぜ私のところにいる?
シャーロック: 自白を聞いて
僕が正しいと確認するためだ
病室のドアの外
警官がレストレードからの電話を受けている。
ドアが開かない
コーニッシュも様子を見にくるが。。
DVDのメアリー:
ジョンは救いの手を拒む
救われることをよしとしない
彼を救う唯一の方法は、彼に救われること
病室
シャーロック: 動機は?
スミス: 憎しみではないし、復讐でもない
人を殺すと、、
ともかく気分が最高によくなる
クスクス笑いだすカルヴァートン・スミス。
すすんで殺人の動機をしゃべり始める。
ほんの僅かにシャーロックの口角があがる。計画通りだ。
私は人間を物に変えるのが好きだ
物なら所有できる
DVDのメアリー: 地獄へ落ちろ、シャーロック
Go to Hell, Sherlock.
カルヴァートン・スミスは、横たわるシャーロックにおおいかぶさり、口と鼻を押さえつける。
DVDのメアリー:
どん底に落ちたように見せかけて
悪党と対決して
危険な状況に陥って
あなたに助けが必要になったら・・
彼は来る
病室のドアの外
ジョンが急いで駆けつけてくる。あの、元軍人らしい足どり。だがドアが開かない。警官もいない。
病室の中
カルヴァートン・スミス : いよいよその時だ
死ね
シャーロックは目をとじる。
その時、ジョンが消火器で鍵を壊して入ってくる。そしてカルヴァートン・スミスを羽交い締めに。
武闘派だから、やるべきことは早い。
ジョン: 何をされた?
シャーロック: 窒息と過剰投与
生理食塩液
シャーロックファンのコーニッシュに頼んで点滴のパックをすり替えておいた。
大丈夫か? You're okay? とジョン。
この声、このトーン、久しぶりだ。
大丈夫じゃない、
of course I'm not okay.
君はそれでも医者か?
とシャーロック。
うまく自白してくれたな、というシャーロックに、カルヴァートン・スミスは自白なんてしてないと。
シャーロックが録音で聴くというと、カルヴァートン・スミスはシャーロックのコートのポケットの3個の録音機器は全部預かった、と得意気だ。
シャーロックは一瞬茫然とした表情になるが、、
少し間をおいて、目と目をあわせるシャーロックとジョン。
ジョン: ゲス野郎 You cock.
ジョンがベッドサイドの杖をとり、上部をあけると録音機が仕込まれていた。
ジョン: 二週間前か?
シャーロック: 三週間前に
ジョン: 僕はそんなにわかりやすいか?
シャーロック: いや、僕がゲス野郎なだけ
I'm just a cock.
ここでメインのストーリーは完結する。
三週間前にジョンが杖を持ってくることを読んでいたシャーロック。
フェイスと会ったのが三週間前。
二週間前にジョンが新しく選ぶセラピストの家を予測し、ハドソンさんとモリーとカルヴァートン・スミスに連絡していた。
で、ジョンが杖を持ってくると予測したのは三週間前。つまり、あの時だ。フェイスが杖をついてベイカー街に来たあの日。
あの事件から一週間後にフェイスと名乗る女性と出会い、カルヴァートン・スミスが連続殺人犯であることに気づき、今日までの流れを読んだ。
天才シャーロックが戻ってきた。
しかし、シャーロックとジョンは、まだどこか距離がある。
ベイカー街、221B
シャーロックとジョンは、それぞれ自分の椅子に座り、向き合っている。
メアリーの幻:
薬で自分の身体を痛めつけたのは、医者のあなたに助けさせるためだった
あの娘 the daughter の登場はリアルだった。彼女だけが知る情報を得た、と不審顔のシャーロック。フェイスは、やはりドラッグが作りだした幻だったのか?
20分後にモリーが来るから、と言って帰ろうとするジョン。
メアリーの幻:
帰らないで話して
一緒に調査して、彼に帽子を
シャーロック: 大丈夫か? Are you okay?
帰ろうとするジョンに今度はシャーロックが言う。帰る時間を少しでも遅くしようとするシャーロックが健気。昔のシャーロックが戻ってきた。
ジョンもそれがわかる。
ジョン: 大丈夫なはずないだろ I'm not okay.
二度と大丈夫にはならない
だけどそれは受け入れなきゃ
それが現実だし
現実は、、クソだ
It is what it is, and what it is is ...shit.
君はメアリーを殺してない
君をかばって死んだのはメアリーの意思だ
シャーロックは、一瞬、驚いた表情。
ジョン: そもそもメアリーに指図できる人間なんていない
君はメアリーを殺してない
微笑むメアリーの幻。
シャーロック: メアリーは僕の命に価値を与えてくれた。でもそれをどう活用すればいいのかわからない
ジョン:それが現実だ It is what it is.
ジョンが階段を降りようとしたその時、
シャーロックの携帯に、あの、アイリーンのアアーンの着信音が鳴る。
シャーロックはしらばっくれるが。
メアリーの幻:
彼女は死んでなかった、彼が助けてあげたのね
お坊っちゃまは女王様がお好き
the posh boy loves the dominatrix !
さすが変人ね
と喜ぶ。
the posh boyは、字幕では「上流階級の男性」になっていた。poshには上流の、という意味があるから原語に近いのは字幕。でも感じが出るのは吹き替えの方。
dominatrixは、字幕でも吹き替えでもSM女王様に。好みの問題だけど「女王様」の方が想像力が働く。
そしてジョンは少し考えてから、、
誕生日おめでとう
ジョンも知らなかったシャーロックの誕生日をアイリーンは知っていた。SPではシャーロックは、アイリーンの写真も持ち歩いてたしね。
メールに返信していないというシャーロックに、ジョンは、
なぜしない?まったくバカな男だな
彼女は、生きていて君が好きだ
君はそれがどんなにラッキーなことかわかってない
いいから返信しろ
可能なうちに
そのチャンスは続かない
そのチャンスはあっという間に消えてしまう
愛する人をなくしたジョンがいうから説得力がある。
そして、、
メアリーは僕を誤解してた
僕が必ず君の危機を救うと
本当は彼女に背中を押されて救った
メアリーが望む僕になりたかった
僕は浮気してた
この時、ジョンはシャーロックではなく、メアリーの幻に向かって話し始める。
僕は君を裏切ってた
シャーロックは、ジョンの様子を見て、ジョンにメアリーの幻が見えていることがわかる。なぜ、それがシャーロックにわかるのだろうか?
ジョンは、バスの中の女性との love affair を、メアリーに話しだす。
微笑むメアリーの幻。
メールだけ。それだけだったが、僕はその先を期待してた。正直、今でも期待してる
僕は、君が思うような男じゃない
そうはなれずにいた
これが事実なんだ
僕がなりたいのは、君が望む男だ
ジョンはメアリーの幻に本当のことを打ち明けた。情けない自分、理想の男にはなれそうもない、ありのままの自分を言葉に表した。
メアリーの幻:
だったら
これからも、頑張れ
Get the hell on with it.
そう言ってメアリーの幻は消える。
涙を流しながら立ち尽くすジョン。
シャーロックは、ためらいながら椅子から立ちあがり、ジョンを抱きしめる。
シャーロック: 大丈夫だ It's okay.
ジョン: 大丈夫じゃない It's not okay.
シャーロック: そうだな No.
でもそれが現実だ But it is what it is.
それが現実だ。シャーロックは、この時ジョンに言っていると同時に、自分自身にも言っている。シャーロックもまたメアリーの死を受け入れられずにいた。二人は、今、悲しみの中で互いに悲しみをわかちあう。悲しみを分かち合い、二人は静かにメアリーの死をうけいれていく。
死、赦し、救済。このシーンは、どこか宗教画のようでもある。
ジョンの中で認めたくない現実。メアリーの死、そして浮気をしていた自分自身の姿。
メアリーの死はシャーロックのせいではなく、誰のせいでもなく、彼女自身が選んだものだったこと。本当はジョンもわかっていた。でも、メアリーの死を認めたくなくてシャーロックのせいにしていた。
本当のことを認める勇気は、本当の自分自身の姿を見つめる勇気でもある。情けない、みっともない自分、自分で認めたくない自分、でも、メアリーの死を現実として受け入れることで、本当の自分の姿を認めるジョン。あれもこれも、現実はこんなに辛いことばかりだ。でもこれが現実。
何回も何回も繰り返されるフレーズ
It is what it is
は、このシーンに向けて積み重ねられてきた言葉だった。
こうして、S4E1から続いてきたシャーロックとジョンの物語はここで終わる。