この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S4E2-4

f:id:knancy:20191201182325j:plain

 

イカー街、221B

ジョンは、メアリーのDVDを見つける。S4E1の最後で、シャーロックが見つけたDVD。ここへつながる。

 

マイクロフトまで追い出すハドソンさん。ここはジョンとメアリーの問題だから仕方ない。

 

 

DVDのメアリー:

あなたへの依頼よ

生涯で一番の難問かも

 

ジョンは、涙ぐみながらDVDを見つめる。マーティンの演技はいつもうまいが、ここも、感情の高まりや変化を僅かな目の動きで表して見事だ。

 

もし、私がこの世を去ったらしてほしいことがある

ジョンワトソンを救って

シャーロック

誰でも救えると思わないで

あなたしか救えない

 

あなたは人間全般に疎いから

私たちの大切な彼について教えてあげる

彼を救う方法もね

 

病室

ベッドに横たわるシャーロックの横にカルヴァートン・スミスが座っている。

どうやって入った?とシャーロック。

 

カルヴァートン・スミスは、

秘密のドア、私が作った棟 wing だ

 

そういえばジョンとコーニッシュの会話のシーンで、背後にカルヴァートン・スミス棟、と書いてあった。ここへ繋がっていた。殺人病棟だ。

 

建築家を次々とクビにしたから

正確な構造は私しか知らない

 

君に質問だ。なぜここにいる?なぜ私の巣へ来て身を投げだした?

 

シャーロックは、、君に殺してほしい。

 

イカー街

建物を出て携帯をかけようとしているジョン。

ハドソンさんが追いかけてきて車のキーを投げながら、車、使って!

 

ハドソンさん、ホントにハンサム・ウーマンだわ。

 

病室

シャーロック: 投薬量を4〜5倍にすれば

1時間以内に僕はショック死する

 

カルヴァートン・スミスに、死ぬ前の気分を教えてくれと言われ、僕は死ぬのが怖い、死にたくない、とシャーロックの声が震える。

シャーロックが、僕は・・死にたくないんだ、と言いながら涙ぐむのは演技。カルヴァートン・スミスの殺人衝動を確実にするためだ。

 

点滴の量を増やすカルヴァートン・スミス。

 

アストン・マーチンの車内

ジョンは、レストレードに電話してシャーロックがあぶないと伝える。

警官がいるのに、と不審がるレストレードに、

 

分からないが、メアリーが遺言を、とジョン。

 

DVDのメアリー:

ジョンは救いの手を受け入れない

でも彼が絶対に拒絶できないことを教えるわ

 

病室

スミス: なぜ私のところにいる?

シャーロック: 自白を聞いて

僕が正しいと確認するためだ

 

病室のドアの外

警官がレストレードからの電話を受けている。

ドアが開かない

コーニッシュも様子を見にくるが。。

 

DVDのメアリー:

ジョンは救いの手を拒む

救われることをよしとしない

彼を救う唯一の方法は、彼に救われること

 

病室

シャーロック: 動機は?

スミス:  憎しみではないし、復讐でもない

人を殺すと、、

ともかく気分が最高によくなる

 

クスクス笑いだすカルヴァートン・スミス。

すすんで殺人の動機をしゃべり始める。

ほんの僅かにシャーロックの口角があがる。計画通りだ。

 

私は人間を物に変えるのが好きだ

物なら所有できる

 

DVDのメアリー: 地獄へ落ちろ、シャーロック

Go to Hell,  Sherlock.

 

カルヴァートン・スミスは、横たわるシャーロックにおおいかぶさり、口と鼻を押さえつける。

 

DVDのメアリー:

どん底に落ちたように見せかけて

悪党と対決して

危険な状況に陥って  

 

あなたに助けが必要になったら・・

彼は来る

 

病室のドアの外

ジョンが急いで駆けつけてくる。あの、元軍人らしい足どり。だがドアが開かない。警官もいない。

 

病室の中

カルヴァートン・スミス : いよいよその時だ

死ね

 

シャーロックは目をとじる。

 

その時、ジョンが消火器で鍵を壊して入ってくる。そしてカルヴァートン・スミスを羽交い締めに。

 

武闘派だから、やるべきことは早い。

 

ジョン: 何をされた?

シャーロック:  窒息と過剰投与

生理食塩液

 

シャーロックファンのコーニッシュに頼んで点滴のパックをすり替えておいた。

 

大丈夫か?  You're okay?  とジョン。

この声、このトーン、久しぶりだ。

 

大丈夫じゃない、

of course I'm not okay.

君はそれでも医者か?

 

とシャーロック。

 

うまく自白してくれたな、というシャーロックに、カルヴァートン・スミスは自白なんてしてないと。

シャーロックが録音で聴くというと、カルヴァートン・スミスはシャーロックのコートのポケットの3個の録音機器は全部預かった、と得意気だ。

 

シャーロックは一瞬茫然とした表情になるが、、

少し間をおいて、目と目をあわせるシャーロックとジョン。

 

ジョン: ゲス野郎  You cock.

 

ジョンがベッドサイドの杖をとり、上部をあけると録音機が仕込まれていた。

 

ジョン: 二週間前か?

シャーロック: 三週間前に

 

ジョン: 僕はそんなにわかりやすいか?

シャーロック: いや、僕がゲス野郎なだけ

I'm just a cock.

 

ここでメインのストーリーは完結する。

 

三週間前にジョンが杖を持ってくることを読んでいたシャーロック。

フェイスと会ったのが三週間前。

二週間前にジョンが新しく選ぶセラピストの家を予測し、ハドソンさんとモリーとカルヴァートン・スミスに連絡していた。

で、ジョンが杖を持ってくると予測したのは三週間前。つまり、あの時だ。フェイスが杖をついてベイカー街に来たあの日。

 

あの事件から一週間後にフェイスと名乗る女性と出会い、カルヴァートン・スミスが連続殺人犯であることに気づき、今日までの流れを読んだ。

天才シャーロックが戻ってきた。

 

しかし、シャーロックとジョンは、まだどこか距離がある。

 

イカー街、221B

シャーロックとジョンは、それぞれ自分の椅子に座り、向き合っている。

 

メアリーの幻:

薬で自分の身体を痛めつけたのは、医者のあなたに助けさせるためだった

 

あの娘 the daughter の登場はリアルだった。彼女だけが知る情報を得た、と不審顔のシャーロック。フェイスは、やはりドラッグが作りだした幻だったのか?

 

20分後にモリーが来るから、と言って帰ろうとするジョン。

 

メアリーの幻:

帰らないで話して

一緒に調査して、彼に帽子を

 

シャーロック: 大丈夫か? Are you okay?

 

帰ろうとするジョンに今度はシャーロックが言う。帰る時間を少しでも遅くしようとするシャーロックが健気。昔のシャーロックが戻ってきた。

ジョンもそれがわかる。

 

ジョン: 大丈夫なはずないだろ  I'm not okay.

二度と大丈夫にはならない 

だけどそれは受け入れなきゃ

それが現実だし

現実は、、クソだ

 It is what it is, and what it is is ...shit.

 

君はメアリーを殺してない

君をかばって死んだのはメアリーの意思だ

 

シャーロックは、一瞬、驚いた表情。

 

ジョン: そもそもメアリーに指図できる人間なんていない

君はメアリーを殺してない

 

微笑むメアリーの幻。

 

シャーロック: メアリーは僕の命に価値を与えてくれた。でもそれをどう活用すればいいのかわからない

 

ジョン:それが現実だ  It is what it is.

 

ジョンが階段を降りようとしたその時、

シャーロックの携帯に、あの、アイリーンのアアーンの着信音が鳴る。

 

シャーロックはしらばっくれるが。

 

メアリーの幻:

彼女は死んでなかった、彼が助けてあげたのね

お坊っちゃまは女王様がお好き

the posh boy loves the dominatrix !

さすが変人ね

 

と喜ぶ。

 

the  posh boyは、字幕では「上流階級の男性」になっていた。poshには上流の、という意味があるから原語に近いのは字幕。でも感じが出るのは吹き替えの方。

dominatrixは、字幕でも吹き替えでもSM女王様に。好みの問題だけど「女王様」の方が想像力が働く。

 

そしてジョンは少し考えてから、、

誕生日おめでとう

 

ジョンも知らなかったシャーロックの誕生日をアイリーンは知っていた。SPではシャーロックは、アイリーンの写真も持ち歩いてたしね。

 

メールに返信していないというシャーロックに、ジョンは、

 

なぜしない?まったくバカな男だな

彼女は、生きていて君が好きだ

君はそれがどんなにラッキーなことかわかってない

 

いいから返信しろ

可能なうちに

そのチャンスは続かない

そのチャンスはあっという間に消えてしまう

 

愛する人をなくしたジョンがいうから説得力がある。

 

そして、、

 

メアリーは僕を誤解してた

僕が必ず君の危機を救うと

本当は彼女に背中を押されて救った

メアリーが望む僕になりたかった

 

僕は浮気してた

 

この時、ジョンはシャーロックではなく、メアリーの幻に向かって話し始める。

 

僕は君を裏切ってた

 

シャーロックは、ジョンの様子を見て、ジョンにメアリーの幻が見えていることがわかる。なぜ、それがシャーロックにわかるのだろうか?

 

ジョンは、バスの中の女性との love affair を、メアリーに話しだす。

微笑むメアリーの幻。

 

メールだけ。それだけだったが、僕はその先を期待してた。正直、今でも期待してる

僕は、君が思うような男じゃない

そうはなれずにいた

これが事実なんだ

僕がなりたいのは、君が望む男だ

 

ジョンはメアリーの幻に本当のことを打ち明けた。情けない自分、理想の男にはなれそうもない、ありのままの自分を言葉に表した。

 

メアリーの幻:

だったら

ジョン・ワトソン

これからも、頑張れ

Get the hell on with it.

 

そう言ってメアリーの幻は消える。

 

涙を流しながら立ち尽くすジョン。

シャーロックは、ためらいながら椅子から立ちあがり、ジョンを抱きしめる。

 

シャーロック: 大丈夫だ  It's okay.

ジョン: 大丈夫じゃない  It's not okay.

シャーロック: そうだな  No.

でもそれが現実だ  But it is what it is.

 

それが現実だ。シャーロックは、この時ジョンに言っていると同時に、自分自身にも言っている。シャーロックもまたメアリーの死を受け入れられずにいた。二人は、今、悲しみの中で互いに悲しみをわかちあう。悲しみを分かち合い、二人は静かにメアリーの死をうけいれていく。

死、赦し、救済。このシーンは、どこか宗教画のようでもある。

 

ジョンの中で認めたくない現実。メアリーの死、そして浮気をしていた自分自身の姿。

メアリーの死はシャーロックのせいではなく、誰のせいでもなく、彼女自身が選んだものだったこと。本当はジョンもわかっていた。でも、メアリーの死を認めたくなくてシャーロックのせいにしていた。

 

本当のことを認める勇気は、本当の自分自身の姿を見つめる勇気でもある。情けない、みっともない自分、自分で認めたくない自分、でも、メアリーの死を現実として受け入れることで、本当の自分の姿を認めるジョン。あれもこれも、現実はこんなに辛いことばかりだ。でもこれが現実。

何回も何回も繰り返されるフレーズ

It is what it is

は、このシーンに向けて積み重ねられてきた言葉だった。

 

こうして、S4E1から続いてきたシャーロックとジョンの物語はここで終わる。