この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S4E3-1

シーズン4エピソード3

最後の問題    The Final Problem

 

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 脚本:

マーク・ゲィティス、

ティーヴン・モファット

監督:  ベンジャミン・キャロン

 

タイトルは「最後の問題」  The Final  Problm  から。

「マスグレイヴ家の儀式」の他、さまざまな作品からも。原作との関連は、シャーロキアンの先輩のみなさまにお任せして。

 

 

S4E3はゲィティスとモファットの共同脚本だ。パソコンの前に二人で座って書いた、とコメンタリーで。

 

この作品はシャーロックその人がテーマだ。モファットとゲィティスが作りあげた、現代のシャーロック・ホームズのオリジナリティが最もよく表現されている。

Final とは、シャーロック自身が最後の問題だ、という意味と、このドラマシリーズをこれで終える、ドラマにとってこれが最後の問題だ、とのダブルミーティングになっている。

 

S4E3でも、一見冒険活劇に見える派手なストーリーとともにアナザーストーリーが進行し、世界中のファンを魅了したドラマシリーズを締めくくるにふさわしい余韻を作りだしている。

 

プロローグ

青い瞳のアップから始まる。

青い瞳の少女。飛行機の中だ。ママも周りの乗客も全員死んでいる。少女が落ちている携帯を拾って、助けて、と電話すると、電話に出たのはモリアーティ。

 

やあ、僕はジム・モリアーティ

最後の問題へようこそ

 

オープニング

 

マイクロフトの家

ゲィティスは、コメンタリーでこの家のことを三軒目の家、と言っていた。最初、石楠花の咲くあの家かと思ったが、普通のデタッチトハウスとは明らかに違う重厚な石造りの邸宅だ。

ただし、この家の豪壮な外観が映像として映るのはコメンタリーのみで本編に出てこないのは、ちょっと不親切。

 

この家で、深夜、マイクロフトは、古い映画を一人で見ている。セリフも誦んじてるからよほどお気に入りだ。

 

そこにいきなり挿入される古い映像。ホームズ家の風景。若き日のパパとママ。ちょっと太めのマイクロフト。そしてくるくるヘアの愛らしい少年はシャーロックだ。 

そこへ、

帰ってきた  I'm back

の文字。

 

このあたりから、やや、ホラーっぽくなる。

鍵があかず、ドアがひとりでに閉まり、、

マイクロフトが傘の枝をぬくと、細身の剣がしこまれていた。

顔のない少女。

 

長い廊下の壁には先祖の肖像画が何枚もかかっている。目から血を流しているのは、ベネディクトのパパ、ティモシー・カールトンの顔。かつらに貴族の服装だ。胸元にはS1E2でもふれた貴族の証の白い布。一枚とばしたその先はゲィティスの顔。この絵には、しっかりとホームズ家の紋章が書き込まれている。

 

このシーンでは、S1でふれた、シャーロックとマイクロフトの帰属する階級がよく表現されている。現代の新しいアッパーではなく、先祖代々の貴族。上流階級の出身だ。首相の次に権力をもつ地位につくためには、この設定がどうしても必要だ。

 

原作では、シャーロック・ホームズの先祖は、ヨークシャーの大地主で、祖母はフランスの画家ヴェルネの妹となっている。芸術を愛するコスモポリタン、そして階級的にはアッパーミドルか。

 

ゲィティスとモファットは、原作とは階級的属性を変えることによって、自分たちの登場人物の背景に説得力をもたせる道を選んだようだ。

マイクロフトがS1やS2で何回かシャーロックに爵位を、というのも、ここで意味がわかる。マイクロフトは、当然、長子相続で親から爵位と先祖代々の家産を相続している。だからシャーロックにも爵位を、というわけだ。シャーロックはハナからいらないと言うと思うけれどね。

 

東風がやってくる、あなたを捕まえに、という歌声が流れると、

出られるはずない、とマイクロフト 。

 

怖いピエロが登場。マイクロフト に剣をむける。

ここでまた秘密が明かされる。

マイクロフトが剣をはずすと、その中には銃が。

 

無駄よ、兄さん

 

銃弾は抜かれていた。

マイクロフトは逃げようとするが、ドアに鍵がかかっていて開けられない。

 

そこへ、鹿撃ち帽をかぶったシャーロックがあらわれ、

 

実験終了

結論その1    妹がいる

結論その2     妹ユーラスは兄が監督する施設に幼少時より監禁

結論その3     妹を恐れてる

 

さらに、ジョン登場。

新情報だ。彼女は外に

 

ジョンがユーラスに撃たれたのは、麻酔銃だったらしい。

ジョンはマイクロフトを脅かして真相を白状せるために、ホラー含みの演出を自分が提案したと説明し、マイクロフトにベイカー街221Bの依頼人になるように勧める。

 

S4E3ではシャーロックとジョンの関係はドラマティックには変わらないが、S4E3のジョンは、S4E2から明らかに進化している。より勇敢に、より成熟した人間像に。これはS4E3の最後までずっと変わらない。

 

イカー街221B

依頼人の席に座るマイクロフト。

 

ハドソンさん: お茶は?

マイクロフト  :  もらいます

ハドソンさん:  やかんはそこ

 

ここで、目と目を合わせてニヤリとするシャーロックとジョンがいい感じ。

 

シャーロック:

兄弟は三人いるんだな

兄さんと僕 

そしてユーラス

僕の記憶にない妹

 

東風がやってくる、シャーロック

僕を脅かしてたな

 

マイクロフト  :  違う、お前を見守ってた

記憶が戻り傷口が開く危険があった

我々が歩く道の下には悪魔が

 

お前は長年の観察が必要だった

記憶の引き金を引く言葉を使うことで

お前の精神状態を試していた

 

なぜ僕は妹を忘れたとシャーロックが言うと、

マイクロフトは、具合が悪そうな表情。

内輪の話だ、とジョンを遠ざけようとするマイクロフト。家族の問題だ、と。

だが、シャーロックは、だからジョンはここに残る、と断固主張する。

ジョンはちょっとニヤリ。

 

ジョン:  ホームズ家の子どもは三人

年齢の開きは?

 

マイクロフト  :  私とシャーロックは7歳

彼とユーラスは1歳

 

ジョンは、彼は真ん中 Middle child  か。どうりで、とまたニヤリ。

 

マイクロフト:

ユーラスは子どもの時から傑出してた

知能判定の結果、私は非凡、と評価されたが、

ユーラスの評価は時代を築く天才

ニュートンをもしのぐ

 

シャーロック:  なぜ僕は妹のことを覚えていない?

 

マイクロフト : ちゃんと覚えている

今までの選択、選んできた道、

お前という人間そのものが、

お前がもつユーラスの記憶なのだ

 

画面は、突然切り替わる。 

広い野原のなかに立つマイクロフト。

 

川、アイリッシュ・セッター、そして小さなユーラス。

回想のユーラスは5歳くらいだとすると、シャーロックは6歳くらい。マイクロフトは、13歳くらいか。

 

マイクロフト :

妹は最初から変わっていた

知るはずのないことを知っていた

 

川で、黄色い長靴のマイクロフト、海賊帽のシャーロック、小さなユーラス、アイリッシュ・セッターが遊ぶ風景の中に、大人のマイクロフトが立っている。 

マイクロフトは川の水の中から小石を一つ拾う。

 

イカー街221B

マイクロフト :  常人には知るよしもない真実を知っているかのようだった

 

マイクロフトの手の中には、回想の中で拾った、濡れた、川の丸い小石が握られている。

 

川辺

小さなユーラスが大人のマイクロフトに向かって:

 大人になったら変な顔

 

とてもストレートな、明確な言い方だ。

 

イカー街221B

この時、マイクロフトは、一瞬、すくんだような表情をみせる。

 

ジョン: どうかした?

マイクロフト : すまない。思い出すと、心が乱れる

 

マイクロフトの手から小石が消えている。

 

字幕では、

ユーラス:  大人の姿ね

マイクロフト :  失礼、嫌な記憶が

 

となっていたが、これだとなぜ嫌な記憶なのか、わからない。

 

この時、ユーラスは、You look funny grown up.

と言っている。子どもは残酷だ。小さな妹から言われた一言がキリのように胸を刺した。少年の頃のマイクロフトは、普通の子どもと同じように感じやすい心の持ち主だったことがこの短いカットでわかる。

 

そして、濡れた小石は、何十年も前の一瞬のできごとなのに、あたかもたった今、この言葉を言われたかのような痛みを大人のマイクロフトが感じている、ということを意味している。

永い年月を経て、濡れた小石の感触と共に、心の痛みが蘇る。

 

iceマンを標榜するマイクロフト。だが、この描写からは、spで考察したマイクロフト像がそんなに大きくは間違っていなかったことが推察できる。氷の下の素顔がふと垣間見えた瞬間だ。

 

マイクロフト  :

ナイフを持っているのを見つかったことがある。自分を切っていたらしい

両親は妹が自殺を図ったと思ったが、、

 

221Bに小さなユーラスが登場して、

筋肉がどう動くか見てみたかったの

 

マイクロフトが痛みを感じたか?と聞くと

痛いってどういうこと?と答えるユーラス。

 

野原の中に建つ古い屋敷、マスグレイヴ

その前に立つ、マイクロフト  、シャーロック、ジョン。

 

マイクロフト  :

マスグレイヴ、 先祖伝来の館

お茶にはいつもハチミツが出た

シャーロックはおかしな墓石の間で遊んでいた

シャーロックはその遊び心が気にいっていた

 

そこへ、みんな、おいでー、という女性の声。

 

墓石には  NEMO HOLMS

1617-1822

Aged 32 Years

 

マスグレイヴの館

子どものマイクロフト 、シャーロック、ユーラスの三人がテーブルに座って、たぶんお茶の時間。マイクロフトはパンケーキに、蜂蜜を塗っているように見える。

子ども用には、ガラスのコップが三つ。

手前には空の皿が二枚。コーヒーカップが二つ。たぶん両親のもの。

大人の女性が皿に何か入れて運んでいる。

 

なので、子どもたちの世話をしているのは、若かりし頃のハドソンさん?と、どうしても思ってしまうが。。。これは謎のまま。