Sherlock Rev. 3
*シャーロックとジョン ③
シーズン3
S3E1
シャーロックとジョンの再会。友情の復活への過程が描かれます。
シャーロックが自分を信用せず、二年間音信不通だったことが許せないジョン。シャーロックが身を挺してジョンを救い、二人の友情は復活します。
最後のシーンで、ジョンのシャーロックを失った悲しみと孤独の深さを理解したシャーロックの目に涙が浮かびます。
S3E2は、シャーロックのジョンへの思いにあふれたスピーチを中心に物語が進行し、ジョンが、推理の道筋を決めていきます。
メアリーとの三人の関係が快いシャーロック。でも、終盤、ジョンの一言で、シャーロックは自分のいるべき場所を知るのです。
シャーロックの世界は、ジョンに理解されることで支えられていることがわかります。
印象に残るのは、血まみれ衛兵事件で、殺されたと見えたベインブリッジがまだ生きていると分かった時、それまで、キビキビと事件現場を仕切っていたシャーロックは、なすすべもありません。対してジョンは被害者の命を救うべく、シャーロックや軍人たちに指示を飛ばします。
S1からずっと示されてきた、探偵と医師、事件解決と人命救助、これら二つのモチーフがここでも繰り返されます。
S3E3
シャーロックとジョンの物語は、クライマックスへと向かいます。
メアリーに撃たれ、生死の淵を彷徨うシャーロック。シャーロックを救ったのは、モリアーティが放った、ジョン、の一言でした。
S3E3の最後で、シャーロックはメアリーのためジョンのため、初めて人の命を奪います。
S1E1の終盤のジョンの行動と重なりますが、元軍人のジョンと異なり、シャーロックの心に大きな傷を残します。
シーズン4
S4E1
傲慢でジョンへの尊敬を忘れたシャーロックは、探偵としても失策ばかりです。そんなシャーロックが、メアリーの死を招いてしまいます。
S4E2
シャーロックとジョンの関係は最悪です。
シャーロックが捨て身で探偵として真実を明かそうと努力する一方で、ジョンは医師としての自覚と誇りの元で行動します。
シャーロックを誰よりもよく理解しているジョンですが、シャーロックが特権的に守られていることを非難します。いつもはジョンの皮肉やジョークで表現されるシャーロックとジョンの距離感が、ここではあからさまな批判となってしまいます。
ジョンに救わせるため、みずからカルバートン・スミスの罠に落ちるシャーロック。
そして、ジョンは自分の浮気や弱さを認め、ありのままの自分を見つめることで、やっと、メアリーの死を現実のものとして受け入れます。
S4E3では、ドラマティックなストーリーが、ドラマシリーズの最後に向け動きだすので、シャーロックとジョンの関係は、あまり動きません。
でも、何箇所か描かれているのは、成熟したシャーロックとジョンの姿です。特にジョンは、堂々としてマイクロフトに負けていません。S4E3で見るシャーロックとジョンは、私たちが知っている原作のシャーロック・ホームズと、ジョン・ワトソンの関係に近いのだと思います。大人のシャーロックとジョンです。
S1E1で、ロンドンの夜の街を走り回っていた二人。危険と冒険が大好きな二人組が、深い悲しみを経て、思慮深い大人のバディになったのですね。
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S1、S2で丁寧に描かれたブロマンスは、S3以降、目立たなくなってしまいます。S3E1でメアリーが登場して以来、二人関係ではなくなってしまったからです。では、ブロマンスは消えてしまったのでしょうか?
S3になると、二人の中にメアリーが入ってきたことで、二人の関係は微妙に変化します。
ブロマンスは、メアリーの存在によってやや不安定な状態に陥ります。
同時に、探偵と医師という立場の違いが目立ちます。S3E2での並立関係は、S4E2では対立関係に近いほど、立場の食い違いが目立ちます。
でも、S3E2のスピーチ、S3E3の飛行場のシーンのように、ブロマンスは三人関係の中でも決して消えてはいません。
S4になると一変。ブロマンスは消えてしまいます。シャーロックが現実の厳しさに負け、ドラッグに逃げ、傲慢なシャーロックに戻ってしまったからです。それでも、ジョンの方はなんとかシャーロックを助けようという姿勢を保ちます。寛容なジョン。そんなジョンが、S4E2では、悲しいほどにシャーロックを憎むのです。
S4E2の二人は、最後に赦しあい、理解しあい和解します。
ジョンは自分の弱さ、浮気をしていた自分、ありのままの現実を認めます。そのことで、メアリーの死を現実としてうけいれたのです。
シャーロックはそんなジョンを胸に抱きます。
シャーロックもまた、どうにもできない自分を抱えていたのでした。
ジョンの悲しみは、シャーロックの悲しみでもあります。大切なメアリーを失った二人。ジョンは、メアリーの死はシャーロックのせいではないと認め、シャーロックの過ちを赦します。
シャーロックもまた、ジョンが現実を直視せず、メアリーの死の原因をシャーロックのせいだけにして怒りを向けたこと、暴力を振るったこと、全てを赦します。
二人とも孤独でした。メアリーは、そんな二人を理解し、愛しました。メアリーを失った深い悲しみの中で、二人は互いを赦しあいます。
さらに次のシーンでは、ジョンがシャーロックに、Even you と言うと、シャーロックもジョンに Even you と返し、見つめ合います。特にシャーロックの Even you には、意味がありますね。あのシャーロックが、ジョンを心から尊敬していることがこの一言でわかります。
この二人の言葉によって、私たちは、二人のブロマンスが本当に戻ってきたことを確信できるのです。
S3、S4は、一話づつではなく、連続した物語として見てみると、そこにブロマンスの長いストーリーが見えてきます。S3、S4は、ブロマンスがないのではなく、ブロマンスの危機と復活、そしてより深い絆で結ばれた二人の関係を描くための長い長い物語だとわかってきます。
S3E1から始まったブロマンスの危機は、S4E1とE2で最悪の状態に陥り、S4E2の最後で復活するという、連続した一つの物語なのです。
シャーロックとジョンのブロマンス。
出会ったばかりの頃の、まだ、子どもで大人になりきらない危なっかしいシャーロックを、大人のジョンが支え、指南し、その中で、シャーロックが天才を発揮していく、その二人の絶妙なバランスがとても楽しかったですね。
でも、S3、S4の、探偵と医師として対等な大人のシャーロックとジョンの、ほろ苦い、月日と苦難を経たブロマンスもまた、心にしみるラブストーリーのよう、と感じるのは私だけでしょうか?