Sherlock S3E2-4
脳内議場
マイクロフト: 犯罪の意図。周到な用意。全てが指し示すのは
披露宴会場
シャーロック: 殺人
やっと話せます。ヴァチカン カメオについて
S2E1で使われ、どういう意味?と話題となったヴァチカンカメオ。諸説あるがイギリス陸軍で使われている符丁のようだ。
ジョン: (メアリーに) 警報だ。誰かが死ぬ。
脳内議場
マイクロフト: 絞り込め!
披露宴会場
会場にカゲロウ男 Mayflyman? の文字がたくさん浮かんでいる。
脳内議場
マイクロフト: 対象を絞り込め
披露宴会場
シャーロック: (マイクロフトに向かって) 違う!あんたじゃない!
君だ 。 (ジョンに向かって) ジョン、君が僕を正しい方向に導く
ここで推理の方向が変わる。誰が犯人か、ではなく誰が殺されようとしているのか。シャーロックの推理を誘導するのは、マイクロフトではなくジョン。
シャーロック: 結婚式でしか殺せない人間は誰か?
普段あまり外出せず、
公の場所で殺すのは家で殺せないから、
家に近づけないのか、住所不明か
非社交的な人物。警護が厳しい人物?
脅迫されているのかも
シャーロックは、ショルトー少佐を見る。
シャーロックは、席札に、あなただ I T'S YOU.と書いてショルトー少佐の前に置く。
脳内議場
シャーロック: 仕事は?
五人の女性: 庭師、コック、付き添い看護師、メイド、警備
シャーロックは、脳内議場にいた五人が、それぞれショルトー少佐に雇われていたことに気づく。人里離れた、誰も訪れることもない辺鄙な場所に一人で住むショルトー少佐。身のまわりの世話をする人々と警備員を雇って暮らしている。
カゲロウ男は、身元が判明しないよう死者の家を使って彼女らと会い情報をききだした。
ショルトー少佐が外出する時は?
五人のうちの一人、テッサがショルトー少佐宛のジョンとメアリーの結婚式の招待状を見ていた。
絶好のチャンスだ。
ショルトー少佐の部屋
ショルトー少佐は、披露宴会場を出て二階にある部屋に入る。鍵をかけ、ピストルを手に。
ホテル内。客室へ向かう階段。
ショルトー少佐の部屋番号を思い出せないシャーロック。後ろから走ってきたメアリーは、207号室!
素晴らしい記憶力。危機がせまる瞬間でも冷静なメアリー。
ショルトー少佐の部屋の前の廊下
ジョン、メアリー、シャーロックは懸命にドアを開けるよう懇願する。
ショルトー少佐: 命を狙われた経験はある。覚悟はできている
有名なホームズさんだろう。謎を解け。謎を解いたらドアをあけよう
メアリーは、シャーロックに、謎を解いて!
ジョン: 君は謎解きが好きなんじゃない。劇的な状況が好きなんだろ。
You' re a drama queen.
ゲームは始まった。解け!
ジョンの一喝を受け、シャーロックの中で何が切り替わり、脳内でベインブリッジの事件の謎が解かれていく。
謎を解いたシャーロックは、メアリーの頬を両手で包んで額にキス。
シャーロック: 彼も劇的好きだ
He's a drama queen too.
メアリー: 知ってるよ Yeah, I know.
このキスは、謎を解いてと命令したメアリーへ。やったよ!僕は謎を解いた。君の期待に応えた!少年のように誇らしげだ。
シャーロックが思わず見せたメアリーへの素直で率直な愛情の表現だ。
ここのマーティンの演技がまた絶妙。
メアリーを見て、次に眉をひそめて、不思議な生き物を見るような表情でシャーロックを見る。
シャーロックとメアリーの間の二人だけの直接的な親密さは、ジョンにはやはり面白くない。
このジョンの感覚は、この後もずっと引き継がれていく。
シャーロック: 誰も殺しにこない。あなたは、数時間前に殺されてる。ベルトを外さないで
ベインブリッジも何時間も前に殺されていた。ベルト越しに。細い刃物で。
ショルトー少佐: ホームズさんと私は似ている
シャーロック: そうですね
ショルトー少佐: 死ぬべき時がある。毅然と受け入れるべきだ。軍人として
シャーロック: ジョンの結婚式です。友人ならジョンの晴れの日を台なしにはしない
ショルトー少佐は、物理的に誰も近づけないような場所で、孤独を守ってきた。命を狙われている自分の危険が他に及ばないように。the most unsociableであることを自分に課してきた。
シャーロックも、また、推理のために人と距離を保ち孤独を守ってきた。彼にとっても the most unsociable であることが重要だった。
自ら選んだ生き方。二人は、その意味で似ている。
ジョンがドアを蹴破ろうとすると、メアリーは、必要ない、と止める。
ショルトー少佐はドアを開ける。
ショルトー少佐: 医師が必要なようだ
I believe I am in need of medical attention.
ジョン: 僕が診ます
I believe I am your doctor.
メアリーは、シャーロックに笑みを向け、ジョンに続いて部屋に入っていく。
披露宴会場、夜
ジャニーンにダンスを教えるシャーロック。実はダンスが好きだった?!華麗なピルエットを披露。
だが、そんなにダンスが上手には見えないし、ここは、連続するシャーロックの身体性の表現の一つではないかな?それと、運転と同じに、シャーロックはダンスは踊れなかったが踊ろうと思えば一日で踊れる、というアレ。
だいぶ前から221Bで練習してたしね。
ジャニーン: ダンスも上手だし。。 (ため息をついて) もし、あなたがマトモならいいのに。
I wish you weren't ・・ whatever it is you are.
最後にカゲロウ男の逮捕。代理の結婚式カメラマン。誰にも怪しまれず何処へでもいけ、誰にも顔を見られない。ベインブリッジでリハーサルをしていた。時間差で毒がまわり、アリバイも簡単にできる。
カゲロウ男の名前はJonathan Small。原作を読んでいる人にはおなじみの名前だ。
ここでは、弟がショルトー少佐の隊で戦死した、という設定に。シャーロックが以前221Bで見ていたネットニュースの、Madeline Smallは、兄弟の母親だ。
披露宴会場
シャーロックは、二人のために作曲した曲をヴァイオリンで演奏している。それに合わせてジョンとメアリーは、華やかにダンスを。
会場は二人のキスに沸くが、ジャニーンだけはシャーロックに賞賛の歓声を送る。お返しに、シャーロックはジャニーンに花を投げる。二人は何となくいい感じ。
シャーロックは、マイクを取ると昼間の騒動を詫びる。
シャーロック: 今日は二人が皆さんの前で誓いをたてました。僕も今夜、人生で一度だけ誓います。最初で最後の誓いを
my first and last vow
この言葉はそのまま、S3E3へとつながる。
メアリー、そして、ジョン、たとえどんなことが起ころうとも、これから僕は常に君たちのそばにいると誓う
君ら三人の。失礼、二人と言いたかった
もちろん、メアリーの妊娠の兆候。もう一つのThe sign of three.
なぜ彼が先に? 僕は医者だぞ、と怒るジョン、今日は休日だったからとシャーロック。
僕で実習を積んできたから心配いらない。こんどはreal babyへ移行を
ジョンは満面の笑顔。
S3E2前半では、シャーロック、ジョン、メアリーの関係はかつてなく幸せで安定していた。
シャーロックは、ジョンと生涯の友情で結ばれている、と感じることができた。
シャーロックは、メアリーにも、同種の通じ合う者の信頼と愛情を感じていた。
しかも、二人をそれぞれに理解するメアリーは、二人を結びつけていた。
メアリーは、その洞察力で、シャーロックの本質を見抜く。シャーロックの天才、未熟さ、純粋さ、全てを。
それがわかるシャーロック。メアリーの前では少年のように素直になる。
あの、三つのサイン。シャーロックとメアリーは、やはり特別な絆で結ばれている。
だが、それはジョンには理解できない領域だ。そこに微妙な緊張が生まれる。
メアリーを見るシャーロックの表情が曇る。
二人に、ダンスを、と促すシャーロック。
メアリーの目から涙がこぼれそうだ。シャーロックを見るメアリーは、とまどいと困惑が入り混じった複雑な表情だ。
メアリーは、泣きそうになるのをこらえながら声をつまらせて、シャーロックの腕に触れる。
シャーロックの寂しさを痛いほど感じているメアリー。
メアリー: そしたらあなたは? And what about you?
ジョン: 三人では踊れない、限界というものがある
シャーロック: そうだね
そう、ダンスは三人では踊れない。今までのように、いつも三人でいることはできないのだ。
メアリーはジョンとダンスを踊り始めるが、じっとシャーロックを見つめ、ジョンの肩越しに声にださずに、ありがとう、と。
シャーロックもメアリーを見つめ返し、微笑みながら頷く。ベネディクトもうまいな。なんとも言えない表情だ。自分が一番大切にしているものが、今、手から離れていこうとしている。
メアリー、これでいいんだよ。もう、三人ではいられない。
一人、取り残されたシャーロック。ジャニーンを見つけて、近くに行こうと歩きだすが、ジャニーンがオタク男とダンスしているのに気づき立ちつくす。
シャーロックは、ステージに向かう。譜面台には、シャーロックが二人のために作曲した手書きの楽譜が置かれている。
楽譜には
Walts,
for Mary and John
by
Sherlock Holmes
と、シャーロックの字で書かれている。三つの名前。署名とも言えるのかな?
シャーロックはその楽譜を封筒にいれ、譜面台に置く。その封筒には、
Dr. and Mrs Watson
二人で一つの名前に。
三人で生きていく、と思いたいシャーロック。でも。。
終盤の一連の流れは、前半の明るさを残酷に裏切っていく。
ハドソンさん、マイクロフトと繰り返された、一時代が終わる、という言葉をシャーロックは実感せざるをえない。
普通の人々に深入りするな、というマイクロフト。普通の人であるジョンと、生涯、共に生きようと思っていたシャーロック。だが、現実は違っていた。普通の人々とは同じ世界には住めないことを、シャーロックは受け入れていく。
モリーは、シャーロックを気にして一生懸命目で探すが、彼女自身はトムやハドソンさんと踊っている。
披露宴会場の庭
物語の最後の数秒、画面は、明るく賑やかなパーティの会場から、一転、夜の闇に包まれる。
シャーロックはパーティの喧騒を背にロンドンへ、シャーロックの庭へ帰っていく。自分の場所は、この暖かく穏やかな場所にはない。今日の誓い my first and last vow 、ジョンとメアリー、やがて生まれてくる新しい命、そして、彼らにつながる普通の人々の幸せを守るためには、彼らから遠く離れて、孤独な営為の中に自分を置くことが必要なのだ。今までずっとそうしてきたように。
シャーロックはコートの襟を立て、「シャーロック・ホームズであること」に戻っていく。
このシーンが原作へのオマージュというのはNyaさんの指摘。確かに原作「四つの署名」の最後の数行は、シャーロック・ホームズの孤独、を描写している。
このドラマでは、その寂寥を引き継ぎつつも、シャーロックの決意を感じることができる。
孤独を自ら選びとることは決して寂しい事でない。なぜなら、その生き方こそがシャーロックをシャーロックたらしめているからだ。ショルトー少佐がわかっていたようにね。
ジョンにもそれがわかっていた。メアリーや、モリーはシャーロックを気遣ったが、ジョンは、きっぱりと、シャーロックを突き放した。ここは君のいる場所ではないと。それは二人の間に強い信頼があればこそだ。
一人、推理することこそが君そのものだ。でも、僕は必ずいつも君と共にいるよ。ジョンはそう言いたかったのかもしれない。
この回では、物語の転換点に必ずジョンがからむ。中盤で、シャーロックの推理を犯人から被害者へ転換させたのもジョン。ベインブリッジの事件の謎が解けないというシャーロックに、解決への道を開いたのもジョン。
そして最後に、ここはシャーロックのいる場所ではないと突き放したのもジョンだ。シャーロック以上にシャーロックを理解しているジョン。ジョンは何も説明しないのだけれど、この瞬間から、シャーロックがシャーロックであることに帰っていく心のプロセスが始まる。
結局、シャーロックの一番はジョンなんだよね。いつも。どんなことがあっても。