Sherlock S3E1-2
メリルボーン通り、ランドマークホテル
シャ-ロックはジョンを驚かそうとウエイターの格好をしてジョンに近づく。
ジョンはメアリーにプロポーズすべく指輪を用意しながら待っている。
メアリはドレスアップして後ろ姿で登場。いきいきとした少女のような表情、ジョンとの会話はとても共感的だ。
シャーロックに気づくジョン、驚きが怒りに変わり、それを必死に抑制しながら怒りがまた蓄積していく表情の変化が見事。二人を交互に見るメアリー。目の前にいるのが死んだはずのシャーロックとメアリーも気づく。
その髭そらないの?という脳天気なシャーロックの言葉でジョンの怒りが爆発、なぐりかかる。
二人を見ているメアリーの表情がどんどん変わっていくのもみのがせない。
店を追い出されカフェに場所替え
シャーロック:13通りの可能性があった。
ジョン:僕が知りたいのはそんなことじゃない
シャ-ロック:マイクロフトの計画だった
メアリー:協力者は必要だもの!
メアリーは瞬時に状況を理解する。
他にはモリーと25人のホームレスが知っていたとの説明に、ジョンの怒りが爆発。
さらに、ケバブの店に移動
シャ-ロック:その髭そらないの?
ジョン:メアリーが気にいっている
シャ-ロック:いや気にいってない
メアリー:ごめんなさい。どうやって伝えればいいかわからなくて
ジョン:この仲間外れ感。懐かしいよ
ジョン:一言だけ「生きている」と知らせてくれればよかったんだ
シャ-ロック:何度も連絡をしかけだが、、君の軽挙が心配で
テロ計画を防ぐ。力を貸してくれ。恋しいんだろ、あのスリルが
で、ジョンの頭突き。
原作ではホームズはごく簡単にこう説明する。
「僕は一人だけに事情を打ち明けた。兄のマイクロフトだ。君にはまったく相すまないけれど、僕は世間から死んだと思われることが絶対に重要だった・・・
あれから三年、僕は君に手紙を書こうと思って、何度ペンをとったかしれないが、そのつど思いとどまったのは、僕に対する親愛の情が、この秘密を暴露してしまうというような軽率なことを君にさせはしないかと恐れたからだ。」延原謙訳『空家の冒険』(新潮社)
原作のジョンはこのドラマのジョンより大人なので、この説明を聞いて怒り狂ったりはしない。会ったとたんに気を失うけれども。
シャ-ロックに比べたら大人に見えるドラマのジョンも、シャーロックと同じように若いのだ。だから二年間の不在に苦しんだ。大きな喪失感、それだけでなく、あのとき気づいていれば、シャ-ロックの傍を離れなければ、という後悔、自責。ここはジョンに同情してしまう。
三人はケバブの店の外に
シャーロック:理解できない。僕は謝ったのに
メアリー:あなたって人は人間てもの human natureがわからないのね。
シャーロック: Nature? No.
Human?... No.
メアリ:私から説明しておくわ
シャーロック:君が?
そう言われてシャーロックはあらためてメアリーを観察する。
一人っ子、語学堪能、賢い、パートタイム、看護師、近眼、ガーデイアン紙、自分でパンを焼く、幻滅している、猫が好き、ロマンテイック、盲腸の手術跡,自由民主党員、秘密のタトゥ、サイズ12、嘘つきLiar。。。
シャーロックがメアリーを見つめている間、メアリーはシャーロックに暖かい微笑みを向けている。
タクシーの中
ジョン:無神経なヤツだろ
メアリー:私は好き I like him.
ジョン:え?!
メアリー:私は好きだわ I like him.
ジョンはめんくらう。
この時点ですでにメアリーはシャーロックのよき理解者だ。こどもっぽくて人間として成熟していないが、ジョンを誰より信頼していて必要としている。ジョンに自分の生存を知らせなかったのは自分が知らせたくなかったのではなく、もっと大事なことを守るためだ。 時にそれは人から理解されないが、大義のために自分の希望や意志や、友人をすてなければならない時がある。その自制の大きさ、重さ。それをメアリーは一瞬で理解した。
シャーロックはモリー、レストレード、ハドソンさんと再会。
モリーは幸せそうに微笑む。レストレードは「この野郎」といいながらギュッとハグ。抱きしめられたシャ-ロックの表情が可愛い。ハドソンさんはホラー映画のような叫び声でお出迎え。
「空の霊柩車」の集まり
バーツの屋上で、シャーロックとモリアーティは恋人同士だった!やがて二人の顔が重なりあい。。。!!
これは会員の妄想。そこに「帽子の探偵が生存」というBBCの臨時ニュースが流れる。画面下に流れているテロップには、マグネッセン、議会に招致。
会員のスマホに一斉に#Sherlocklivesのハッシュタグが流れこんで画面いっぱいに広がっていく。
ジョンの部屋
髭をそるジョン。半年間、我慢したのに、ご主人さまHis Nibsが帰還したらすぐにそるのね、とメアリ-。
ジョンは髭をそってクリニックに出勤。最初の地下鉄や墓地のジョンとは全く違う表情。シャーロックが帰って来て本当は嬉しくてたまらない。
ベイカー街221B
テロ事件の捜査にかかり始めるシャーロック。
ホームレスのネットワークのマーカー・・ネズミに注目する。
シャーロックとマイクロフト、二人は向かい合わせに座っている。
ここのシーンは大好き!
ここのシャーロックは、可愛らしくて少年のよう。小さい頃の兄弟の時間が蘇っている。
最初、カメラの角度でチェスをしているように見える。が、ブブ-という音がして赤い光が点滅する。
しまった、というマイクロフト。
チェスではなく「手術ごっこゲームoperation」だった。
二人は手元を全く見ていない。二人はまだ小さな頃からこのゲームを何十回、何百回としてきたからだ。二人の天才少年。友達はいなかった。
シャーロック:破れた心臓 broken heart は、扱えないんだな
マイクロフト:賢そうなことを言うな
シャ-ロック:子どもの頃からそうだ。「賢いのは僕のほうだ」って
マイクロフト: 賢いのは私だ
シャーロック:子どもの頃、自分のことをバカだと思ってた
マイクロフト:私たちは二人とも君をバカだと思っていた
マイクロフフト;君は最近ともだちをつくってるんだね
シャーロック:兄さんは作らなかった?
マイクロフト:君さえバカに見える私だ。
普通の人々など。。金魚なみのバカだ
シャーロック:僕は二年間、留守だった。金魚のお友だちを作ったかと
依頼人が忘れていった毛糸の帽子をめぐる推理ゲームを、久しぶりにやろうとシャーロックが誘う。ここで、「推理すること」を、小さなシャーロックにマイクロフトが教えたことがわかる。
帽子の持ち主が男だ、というマイクロフトに髪の短い女性かもしれないというシャーロック。
マイクロフト: 確率の問題だ
シャーロック: 女性のことを知らないくせに
まず、ちょっと敵討ち。
シャーロック: 孤独を見逃している
シャーロック:バカげた帽子をかぶる奴に友だちはいない
マイクロフト:他と違うことを気にしていないだけで、孤独とはかぎらない
シャーロック:その通りだな exactly
マイクロフトは、シャーロックがめずらしく自分の言葉を肯定したことにとまどう。
シャーロック:人と違っても問題ない。誰もそんなこと、気にしない
マイクロフトは、自分のことを言われているのだと気づく。
マイクロフト:私は孤独ではない I’m not lonely, Sherlock.
シャ-ロック:どうしてわかる? How would you know?
これは多くの方が指摘しているように、S2E1のバッキンガム宮殿の兄弟喧嘩の仕返しという意味もある。
シャーロック:Sex doesn’t alarm me.
マイクロフト:How would you know?っていう会話ね。
S2E1ではセックスをしらない(と思われる)シャーロックに、「どうしてセックスがこわくないとわかるのか」、とマイクロフトが聞く。
ここでは「私は孤独ではない」というマイクロフト、友人のいないマイクロフトに、「どうしてそれがわかる」、とシャーロックが聞く。
ジョンという友人のいるシャーロック、ジョンのいない二年間をすごした。それは潜入捜査という特殊任務ゆえに孤独なものだった。
シャーロックが生きていることを知らなかったジョンも辛かったが、知らせることができなかったシャーロックも同じように辛かったのだ。
確かにこの会話は、バッキンガム宮殿の仕返しという意味もあるだろう。だが、それ以上にS1E1から続いてきたシャーロックの人としての変化や成長を示すプロットだ。それは折りにふれ、形をかえ、さまざまに表現され、ヘンゼルとグレーテルが落としたパンくずのように、道案内をしてくれている。