この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S1E2-4

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スコットランドヤード

シャーロックとジョンが、またディモックに会いにきている。

 

 

ジョン:何人死ねば殺人鬼の存在を信じるんだ?

 

ディモックは冷淡だ。話を聞こうとしない。

 

シャーロック: 最初の2人は密輸団のために働いていた。 組織の名は黒い蓮

ここロンドンで暗躍している

 

ディモック: 証拠は?

 

シャーロックの話にまだ懐疑的なディモック。

そこで、、

 

バーツ、食堂

シャーロックが、モリーに、ヴァン・クーンとルーキスの遺体を調べたい、と言うと、

 

モリー: 二人とも私の担当だけど

もう書類の処理はすんじゃったから

 

そこで、シャーロック。

髪型、変えたんだね、いつもと分け方が違う

うん、いいよ、似合ってる

 

モリーは、やった!という表情。

 

She dithers – ought  to say ‘no’ —

wants  to say 'yes’,  because it’s him.

揺れるモリーの片思い。

And he's got her.

 

シャーロックとモリーの関係によっても、私たちはシャーロックの変化を知ることができる。

ここでは、モリーは、シャーロックにとって利用するのに便利な存在。モリーの気持に気づいているのかいないのか。気づいたとしても、ここのシャーロックはそれをうまく利用しよう、と思うだけだ。

 

バーツ、遺体安置室

シャーロックは、ディモックを連れてきて、ヴァン・クーンとルーキスの足を見せる。

二人の足の踵に蓮の入れ墨。

 

この辺からディモックの態度がちょっと変わってくる。どうも、シャーロックの推理はまとを得ているのかもしれない、と。

何が必要なんだ?

 

シャーロック:  二人が持っていた本、全部。

 

イカー街221 B

シャーロック:  ただの犯罪組織じゃない、カルト集団だ。彼女の兄は洗脳された

兄は妹の知識を必要としてた

 

ジョン: 古美術品の知識か

 

二人は、パソコンでオークションの日付と品物を確認。ヴァン・クーンとルーキスは、中国で盗んだものをオークションで売り捌いていた。

 

シャーロック: 二人のうち、一人がブツをくすねた

ジョン: それで、ジジューが奪還に現れた

 

そこへ、ルーキスとヴァン・クーンの部屋にあった本が運びこまれてくる。

 

シャーロック: 数字は参照するページと言葉を示している

15、1は

15ページの1番目の言葉

二人とも持っていたその本を特定しないと

 

部屋中に積み上げられた箱。

 

ジョン: そうか、短い時間で済みそうだ

 

これはもちろん皮肉。

そこへディモックが、証拠品袋を持ってくる。

ジョンが撮った蘇州嗎字の写真を印刷した紙が入っている。

 

ディモック: 他に何か? 手伝いでも?

 

ようやくシャーロックの推理を認め始めたディモック。初めて下手に出る。

 

だが、シャーロックは、

静かにしててくれ

 

ジョンは、言う通りにしろと目で合図。

 

夜を徹して二人の奮闘が続く。

朝が来て、ジョンはそのまま仕事に。

 

GPの医院

ジョンは診察室で居眠り。サラをデートに誘う。

 

イカー街221B

シャーロックは、まだ本を探している。どうしても本が見つからないシャーロックは、方針転換。自分の本棚から三冊の本を取り出す。

 

誰でも、持っている本を探さなくては、、

 

オックスフォード英語辞典

聖書・・・

 

仕事を終えたジョンが帰ってくる。

 

シャーロック: 今晩は気分転換に出かけよう

 

ジョンが今夜はデートだというと、シャーロックは、壁に貼ってあったポスターからちぎり取った紙片を渡し、

イエロー・ドラゴン・サーカス、ロンドンで一夜限りの公演

 

イーストエンドストリート、劇場

ジョン、サラ、シャーロック、三人で、クロスボウの脱出芸を見ている。

次はクモ男の芸だ。

 

劇場

シャーロックは楽屋で黄色いペンキのスプレー缶を見つけるが、戦士の衣装をつけた男と乱闘になる。

 

男の一撃を受けたシャーロック。舞台の下に倒れ込み動けない。ジョンがまず男と格闘し、サラも助太刀。シャーロックは助けられる。

男の踵には黒い蓮の刺青。

 

スコットランドヤード

ディモックは不機嫌だ。

 

ディモック: パトカーをやったが、劇場には何も無かった

 

シャーロック: ヴァン・クーンかルーキスのどちらかが、高価なものを盗んだ

サーカス団の目的は、盗品の奪還だ

 

ディモック: それって何だ?

ガサいれしたからには成果がなくては困る

 

イカー街221B

シャーロック:  手ぶらで帰国するはずがない

ヤツラの隠れ家を見つけないと

暗号に書かれているはずだ

 

部屋の様子に興味をもつサラに、イライラと迷惑そうなシャーロック。

そこへハドソンさんが、パンチとおつまみを。

サラが、ディモックが持ってきた証拠品袋の中の紙に、暗号が訳してあるのを見つける。

 

迷惑がっていたシャーロックの表情が変わる。

ジョン、これを見ろ

スーリンが、あの時、意味を書きいれてくれていたんだ

 

シャーロックは、博物館の修復室に、この本がまだあるはずだと言って飛び出していく。

 

イカー街

シャーロックは、博物館へ行こうと走り出すが、家の前の路上で、問題の本がロンドンの地図 London A - Z だったことに気づく。

 

シャーロックは観光客から巻き上げた London A - Z で言葉を探す。

 

15-1  は、死人の小道  Deadmans Lane

殺すという脅迫

最初の暗号だ

 

次の数字は、〜の for

Nine mill ... for...  Jade (翡翠)

 

NINE MILL FOR JADE PIN.  DRAGON DEN

BLACK TRAMWAY

 

900万のヒスイのピン

竜の巣

黒い

路面電車

 

イカー街221B

シャーロックが、ジョン、わかったぞ、単語も、本も

と言いながら221Bに戻ると、二人の姿はなく。

 

窓ガラスに黄色のペンキで、 DEAD MAN  を意味する蘇州嗎字が残されている。

 

路面電車のトンネル

ジョンとサラが囚われている。

ジョンをホームズさんと呼ぶ女性、シャンと名乗る。

 

イカー街221B

シャーロックは混乱している。ジョンを探そうと本棚からロンドンの地図を取り出す。

ここだ、キングスウェイ

 

キングスウェイ、路面電車のトンネル

シャン: 宝物はどこ?

髪留めはどこ?

900万ポンドの皇妃の髪留めよ

 

クロスボウの標的になるサラ。

そこへシャーロックが現れる。

ジジューに後から襲われて動けないシャーロック。ジョンがクロスボウを蹴りジジューは死ぬ。シャーロックは助けられ、サラは自由に。シャンは消える。

 

現場に駆けつけたディモックに、シャーロックは、

君の手柄にしろ

君には輝かしい前途を期待している

 

ここでディモック、

I go where you point me.

 

字幕では  あなたに従えばね

吹き替え  君がついていればね

 

となっているのだが、ここは素直に

 

あなたの指示のとおりにします

 

とした方が、物語に沿っていると思う。

でないと、ディモックのシャーロックに対する態度の変化をずっと追ってきた意味がなくなってしまう。

最後にディモックは、シャーロックに降参する。あなたの仰せのままに、まさに、神託として従います、と言っているのだから。

 

イカー街221B

シャーロックがティーポットのお茶をジョンのマグに注いでいる。シャーロックなりのねぎらい。

 

ジョン: 900万ポンドのヒスイのピン・・・

 

シャーロック: 組織の仲間に

協力を呼びかけてた

 

ジョン: 900万ポンドのヘアピン? 

 

シャド・サンダーソン投資銀行、ヴァン・クーンの部屋

アマンダはヴァン・クーンの愛人だった。

ハンドソープからそれを見抜いたシャーロック。ヴァン・クーンの部屋のハンドソープと、アマンダのハンドクリームが同じブランドだった。

 

シャーロック:  なぜわかれた?

 

アマンダ: 大事にされてないと思ったの

I thought he did't  appreciate me.

 

ジョンはセバスチャンと話している。

バルコニーから侵入を?

 

ジョン: 窓に板でも打てば安全です

 

ジョンは、セバスチャンから20000ポンドの小切手をうけとる。

セバスチャンは、皮肉っぽい態度。

 

シャーロックは、アマンダが髪からはずしたヘアピンを手にしながら、900万ポンドの価値だと告げる。

 

イカー街221B

ジョン: 高価な骨董品と知らず使ってた

シャーロック: ヴァン・クーンは価値を知らなかった

 

ヴァン・クーン=The Blind Banker

 

シャン将軍は逃がしたというジョンに、

シャーロック:  僕らは一端を暴いただけさ

we barely scratched the surface.

 

scratched 、つまり、シャーロックとモリアーティの長い物語が始まる、ということを既にシャーロックは感じている。

 

某所

シャンは、パソコンの前で誰かと話している。

 

シャン:  予想外でした

あの男が現れるとは

シャーロックホームズ

あなたの安全も脅かされています

 

Mー私にたどりつかれては困る(文字)

 

シャン: 私は絶対にもらしません

 

Mーもちろんだ(文字)

 

この言葉と同時に、銃のレーザーポイントがシャンの額に当てられる。

暗転と同時に銃声。

 

Mは、もちろん、S1E1の最後にも名前が出てきたモリアーティ。

 

S1E2は、推理作品、謎解きの作品としてよくまとまっている。シャーロックの推理の展開が、ほぼそのままストーリーの展開になっている。ほとんど全ての推理作品と同じように、

時々間違ったり、危ない目にあって仲間に助けられたり。その意味でここのシャーロックは、普通の探偵だ。

つまり、S1E2はシャーロックの天才を封印することで成り立っている。

シャーロックは、ジョンに謎解きの途中で二度も先を越される。ルーキスの手帳と蘇州嗎字の発見。

さらにサーカスの場面と路面電車のトンネルのシーンで、二回もジョンに命を救われる。

おまけに、サーカスの場面ではサラにも助けられている。サラは、シャーロックとジョンが見逃していた、証拠品袋の中のスーリンが暗号を訳していた文字も見つける。そのサラはジョンのガールフレンド。

 

こうして見てみると、このS1E2はシャーロックの推理と並行して、ジョンの優秀さを描いているといえる。ジョンの明晰さ、勇敢さ、判断力、行動力、、女好きも含めて。。

もちろん、シャーロックの能力は、一貫としてディモックを通じて描かれている。だからこそ、ディモックとの最後のシーンで、ディモックがシャーロックに完敗し感服するところで、謎解きの部分は終わる。

 

また、人物や物語が社会批評的なのも特徴だ。ナショナルギャラリーから、裏の路地へ。

国立古美術美術館からサウスバンク・スケートパークへ。

セバスチャンやヴァン・クーンに対する描き方と、スーリンの描き方の違いも明らかだ。特にセバスチャンについては、徹底的に鼻持ちならない人物として描かれている。

 

推理に即して物語が進むので、他の作品ではあまり気にならない細かいプロットが気になる。組織から姿を隠す必要のあるスーリンが、なぜ中華街に住んでいるのか、突然現れたシャーロックを、スーリンはなぜ一瞬で信用するのか、

なぜ、家の前にいるシャーロックが配達員を装ったシャンの一味に気づかないのか、等々。

さらに悪の親玉であるシャン将軍について一切説明がないのも、推理作品ではありえない。

 

とはいえ、こうして、シャーロックとジョンの信頼は徐々に深まっていったということだ。シャーロックは、初めて、ジョンと助けを呼んだし、ジョン、わかったぞ、と推理の過程の中にジョンが入ってくる。

前半では、自分の推理の中にジョンが入ってくることを拒否していたシャーロック。だが、終盤では、推理を進める上でジョンが必要になってくる。

S1E1から始まった二人の関係。S1E2では二度もジョンに命を救われたシャーロック。二人の関係が徐々に変化し、ジョンがシャーロックにとって大切で、なくてはならない存在になっていく。

だから、S1E3の二人を描くためには必要なストーリー。だが、そのための天才の封印が、好き嫌いの分かれるところだ。私は、やっぱりシャーロックらしい天才ぶりと変人の方が好きだけどね。