Sherlock S4E3-4
特別房 cont.
ジョン : (銃を) 拾っておけよ
シャーロック: ご褒美って?
マイクロフト: いや、、ヴァイオリンだ
扉があき、三人は次の部屋へ。
モリアーティの車掌のパフォーマンスが続く。
海に面した部屋
赤いペンキで血塗られたように塗装してある。
電話の少女の声:
今は夜
大型飛行機
乗客は、みんな寝ている。運転手も寝ている
ばあやの家から乗ったの
行き先は、おうち
スクリーンのユーラス :
六か月前におきた迷宮入り事件、私は解いたけど
シャーロック、犯人をあてて
容疑者はガリデブ三兄弟。
ガリデブは、原作由来だ。
自分たちは張り合わされてるというマイクロフトに、ジョンは、兵士になれ、be soldiers つまり、自分たちはどうなってもいいということだという。元軍人のジョンならでは。以降、伏線として繰り返される。
推理に影響を与える繋がり context を教えてあげるといいながら、ユーラスは、窓の外、つまり、海の上に三人の男を綱でつりさげる。
つながり context という言葉もまた、これ以降何回も繰り返され、伏線、もしくは重要なキーワードになる。
シャーロックは、正しく犯人を言いあてるが、ユーラスは綱を切り、三人とも海に落とす。
無実の者と犯人を殺すのは同じ気分、と言いながら。
三人は当惑し混乱する。
シャーロック: (ジョンに) 今日は兵士になれ。
棺のある部屋
部屋の中に棺が一つおいてある。
電話の少女の声: 海が見える。遠くに町の灯りが見える
マイクロフト : 飛行機を人が住んでる地域から遠ざけて、海に墜落させる。あの子に飛行機を墜落させるんだ。
ここは、S4の冒頭から描かれているイギリス政府そのものであるマイクロフトの発想の挿入。為政者の立場だ。
ユーラス: 棺
問題。誰かがもう少しで死にます
まだ、若いのに
言っておきたいこともあったろうに
誰の棺?
状況のつながり context は後で教える
シャーロック:
160cmくらいの女性のもの
子ども用ではなく、質素な良品
現実的で利にかなった選択だ
親族とは疎遠な未婚女性のものである可能性が高い
選んだ棺の安さから
死を身近にし
遺体の処理に感傷的でない
マイクロフト: 蓋の名前を見ろ
I LOVE YOU
シャーロックを愛している誰かだ
すべてはお前に関連している
心あたりは?
ジョン : アイリーン・アドラー
シャーロック: 彼女の趣味じゃない
未婚で、死について現実的で、孤独
ジョンとシャーロックが同時に。
ユーラス: 彼女は安全よ
今のところはね
ただし、部屋には爆弾がしかけてあって三分後には爆発
彼女が解除コードを言わない限り
あなたの携帯から電話をかけて、彼女に言わせなさい
ただし彼女の命が危ないと言ってはダメ
三分の表示とモリーの部屋が写しだされる。
シャーロックからの電話がかかってくる。
シャーロック: 理由を聞かずこの言葉を言ってくれ
あなたにだけは言えないと言うモリー。
だって本当だから
シャーロックから先に言ってと言うモリーに、シャーロックは、心をこめて I love you.
と言う。二秒を残して、モリーも同じ言葉を口にする。
この時、スクリーンの中のユーラスはすぐに言葉がでない。一瞬の沈黙がある。ユーラスは感極まった表情だ。かすかに微笑みが浮かんでいる。
この短いカットが、雄弁にユーラスの気持を表している。この言葉を聞きたいのは誰よりもユーラス。自分に向けられたものでなくても、シャーロックが言うこの言葉がユーラスの心をゆさぶる。
だが、シャーロックがそんなことに気づくはずもない。シャーロックは、勝ち誇って言う。
ユーラス。僕の勝ちだ
飛行機の少女と話をさせろ
勝った
モリーを救った
ユーラス : 救った? 何から?
バカね、爆弾なんか仕掛けてない
あなたは負けたの
モリーを傷つけ、自分も傷つけ
感情的なつながり Emotional context がいつも身の破滅を招く
このシーンは見ている方も辛い。モリーの気持もシャーロックの気持も私たちにはわかる。
モリーは、シャーロックを愛しているからこそ、強制的に言わされる言葉は、彼女を傷つける。シャーロックにも、自分の言葉が彼女を傷つけていることがわかりすぎる程わかる。それでも彼女に言わせようとする自分が許せない。だが、モリーの生命を救うため、そして飛行機の少女を助けるためには、避けられない。
シャーロックからこの言葉を言ってほしい、もう一人の気持は誰にも共有されない。
言葉が気持を裏切る。シャーロックを傷つける言葉しか口にしないユーラス。
あの時、ユーラスではなく、フェイスとして会った時は、シャーロックを笑わせることさえできたのに。自分の言葉となった今は、自分の気持ちを裏切りシャーロックを傷つける言葉しか言えない。
やはり、棺はユーラスのものだったのだろう。未婚で家族と疎遠。死に対して現実的。それは、ユーラスそのものだ。 I LOVE YOU は、ユーラスの真実の気持。そして決して口にできない気持だ。
シャーロックを愛し、シャーロックから愛されることを誰よりも渇望しているユーラス。
付け加えると、もう一つ分かったことがある。
モリーの秘密が明かされた。今まで、モリーについては何も説明がなかったが、両親や兄弟や、近しい身内がいないことがわかる。
だから、いつも恋人を求めている。モリーもまた孤独だ。
モリーの家に爆弾が仕掛けられていなかったことがわかり、、
しっかりしなさい
次の問題は簡単じゃないわよ
ジョンとマイクロフトは、部屋を出ようとするが、
シャーロックは、棺に蓋をし、力まかせに棺を打ち壊す。感情を爆発させる。ユーラスに対する怒り。自分自身に対する怒り。理不尽なものに対する怒り。しかし、それもユーラスの計画のうちだ。感情の発露こそ、ユーラスの目的だから。
心身ともに力つきて座りこむシャーロックに、ジョンは、
この拷問がつらいのはわかる
でもしっかりしてくれ
シャーロック:
拷問ではなく生体解剖だ
僕らはネズミとして体験してる
シャーロック/ ジョン:
( 同時に) 兵士たれ
車掌のモリアーティ: 乗車券を拝見します
さらに次の部屋
ユーラスの生体解剖は続く。
この部屋には、スクリーンが三つ。
シャーロック : 空っぽじゃないか
ユーラス: 空じゃないわ
銃があるでしょ
二人だけしかここから先に進めない
いよいよ決断の時がきた
ジョンとマイクロフト 、どちらが必要?
一人を選んでもう一人を殺す
家族か友人かどちらかを選んで
マイクロフト : 議論の余地はない
先生を撃ち殺せ
食い入るように見つめるスクリーンのユーラス。
マイクロフト : 先に進むのは決まってる
お前と私
我々は兵士だ、兵士は祖国のために死ぬ
残念だが、先生
その栄光はあなたのものだ
これを言うために何回も繰り返されてきた「兵士であれ」。現実に兵士、軍人だったのはジョンだけだから。
ジョン: 反論の余地すらない
ユーラスは、ジョンを見つめる。
マイクロフト : 思ったとおりだ、お前は昔からいつものろくてバカだった
だから見下されていた
一族の恥
家名を汚す存在だ
シャーロック: もうよせ
ブラックネル卿夫人の時の方がずっと演技力があった
今のはわざと言ったんだ
僕が兄を殺しやすいように
ここで使うための「ブラックネル卿夫人」だった。
シャーロックはマイクロフトに銃を向ける。
凝視するユーラス。
マイクロフト: 顔はやめてもらえるかな
脳は王立協会に約束してある
どこかに心臓はあるはずだ
標的としては小さいが
私のせいだ
五年前のクリスマスに
ジム・モリアーティと五分間、話すことを許した
さよなら、弟よ
花はいらない
ここで、初めてマイクロフトは、シャーロックとジョンに、自分がクリスマスプレゼントとして、モリアーティをユーラスに引き合わせたことをうちあける。今までごまかしていたが、最後に誠実であろうとしたマイクロフト 。
シャーロックは、マイクロフトに銃口をむける。
わざと自分が標的になるように仕向けるマイクロフト。S4E3では、凛々しいジョンと対象的に、マイクロフトはどことなくみっともなく描かれていたが、このシーンを際立たせるためだったか。
ユーラス : ジム・モリアーティは、この結末を読んでた。興奮してたわ
モリアーティ: 着いたよ、終点だ
ホームズがホームズを殺す
僕はここで降りる
モリアーティが仕掛けた死後のゲーム。シャーロックの負けか。。
すると、モリアーティの名前がシャーロックにスイッチをいれる。S2E1でもそうだった。
シャーロック: たった五分で
彼女は、僕たちをここまで追い詰めたのか
それは僕が許さない
ユーラス : 何してるの?!
シャーロック: 覚えていてくれと言い残した勇敢な男を思いだしてる。所長だ
シャーロックは、所長と同じように自分の喉に銃口をあて撃とうとする。
激しく動揺するユーラス : ダメ、ダメよ
赤ひげのこと、知りたくないの?
シャーロック!
すぐやめなさい!
小さな投げ矢が壁の穴からシャーロックとジョンに飛んでくる。
倒れるシャーロック。
シャーロックの脳裏に浮かぶマスグレイヴ。
墓の前で本を読む小さなシャーロック、川の水の中で遊ぶアイリッシュ・セッターと小さなシャーロック。そして川辺に立つ小さなユーラス。
小さなユーラスをシャーロックは思いだした。
電話の女の子の声:
もしもし
真っ暗な部屋の中で目をさましたシャーロック。天井の窓からは月が見える。
シャーロック:
勇気をだして飛行機の前の方へ行ってくれる?
シャーロックの背後の壁には、子どもの頃のシャーロックとマイクロフトの写真が無数に貼られている。
決して一緒に写ることはなかったユーラス。
そこには、ユーラスの長い孤独な年月がある。
ジョンの声も聞こえる。
ジョン : どこか暗いところにいる。マイクロフトはいない
ジョンの足元には水が。しかも鎖に繋がれている。
ジョン : 何かの骨だ
シャーロックの足元には、赤ひげと書かれた犬の食器。
電話の少女の声 : 運転手が起きないの
川が見える
観覧車も
テームズ川とロンドン・アイ。
シャーロック: それじゃ僕と君で運転しよう
ジョン : 井戸だ。僕は井戸の底にいる
シャーロック: シェリンフォードに井戸?
隙間風だ
シャーロックが灯りをあてた場所には、10代後半のゲイティス、いや、マイクロフトと、赤ちゃんのシャーロックの写真。
シャーロックが壁を倒すと、そこはマスグレイヴだった。
帰ってきた I'm home.
マスグレイヴの館だ Musgrave Hall.