この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S3E3-2

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 イカー街、221B

CAMが221Bを訪ねてくる。

ハドソンさんを見ると眼鏡ごしに文字が浮かぶ。

Martha Louise Hudson

Land Lady  家主

Widow  未亡人

Semi-Reformed Alcoholic  準アルコール中毒更生者

Former "Exotic Dancer"  元ストリップダンサー

 

 

Exotic Dancerとは、ストリップダンサーのこと、とはYuko Katoさんのブログで。あら、ステキ。

 

Pressure point: Marijhana  急所: マリファナ

 

このブログではハドソンさんネタはこれまで省いてしまったが、若い時はフロリダに住み、ドラッグのカルテルのボスだった夫を死刑にしたのがシャーロックとの縁。S1E1から断片的に情報が示される。

 

フロリダのハドソンさんとシャーロックとの接点は謎のままだ。少し前のシーンで、マイクロフトが、両親がオクラホマでラインダンスをしているといって唐突にアメリカの州名が出てくる。両親が昔アメリカ南部にいたことがあり、フロリダのハドソンさんと接点があって、両親からシャーロックに繋がった可能性はある。イギリスに渡ったのもシャーロックの両親との縁だったのかも。

そうすると、S3E2で出てきた「お母さまは、たくさん言いたいことがあるでしょうね」も、シャーロックと知り合うよりも前に、ハドソンさんはシャーロックの両親、特に母親と知り合いだった、という可能性も考えられる。

このあたりは何の説明もないので想像するだけなのだけれど、長い関わりを考えると、 S1E1でのハドソンさんとシャーロックの特別な親密さにも合点がいく。

 

CAMが見たジョン。

Pressure Point:  Harry Watson(姉)、アルコール中毒

Mary Morstan(妻)

 

CAMが見たシャーロック。

Brother:  Mycroft Holmes  M.I.6

Officialy Deceased  2011-2013  公式死亡期間

 

Pressure Point:   Irene Adler

Jim Moriaty

Redbeard  赤ひげ

Hounds  of  Baskerville

Opium     阿片

John Watson

 

ほー

7%のコカインじゃなく、阿片だったの?

 

つまり、シャーロックの急所はジョンで、ジョンの急所はメアリー。逆に並べると、メアリー、ジョン、シャーロックとなり、シャーロックの兄はマイクロフト。マイクロフトの最大の急所は、間違いなくシャーロックだから、

CAMの狙いが、イギリス政府そのものであるマイクロフトであることが、漠然とわかる。ただ、ここでは、これはまだ伏線のそのまた伏線。

マイクロフトがM.I.6のトップであることも、ここで初めてはっきりとわかる。S1E1、S1E3で、イギリス、インテリジェンス界のトップだということは、なんとなく示されているけれど、明確にわかるのはここだ。これでS2E3で、マイクロフトがセルビアに潜入できた理由もわかる。専門分野だからね。

が、しかし、この図式でいうと、シャーロックは一方的にジョンに片想い。

 

CAMは、221Bで嫌なヤツ感満載だが、外国人であるCAMのイギリス人批評は辛辣だ。

イギリス人の長所は飼いならされていること、

草食動物の国、だと。

 

シャーロックはレディスモールウッドの代理人として自分を認めるように何回も繰り返すが、CAMは、一貫として無視する。

この時のシャーロックの言い方が

  I was trying to explain that   I've been  asked to

act  on behalf  of...

と、超丁寧。

もちろん交渉だから、日常の言葉ではないが、CAMに草食動物の国と愚弄されながら、礼儀正しいシャーロック。女王も国家も認めないシャーロックだが、自分は正真正銘まぎれもないイギリス人だ。

このあたりの視座の相対化。うまいなあ、モファット。

 

最後にCAMは、上着の内ポケットから、スモールウッド卿のものと思われる手紙をちらっと見せて221Bを去る。交渉する気がある、僕がクスリ漬けだと思っている、と上機嫌なシャーロック。

 

シャーロックは、夜に、ロンドンのCAMのオフィスの金庫にある手紙をとり戻しにいく、という。その前に買い物がある。

 

別れ際、ジョンにピストルを持ってくるな、と言いつつ。。あ、もちろん持ってこい、という意味。物語の最後へ続く伏線。

 

シャーロック:  結婚して7ポンド太ったな。自転車に乗っても体重が落ちない。

ジョン: 4ポンドだ。

シャーロック:  メアリーと僕は7ポンドと見てる

 

僕とメアリーは仲間。ジョンとメアリーの間に割って入るのではない。でも、推理や観察ではメアリーを信頼しているシャーロック。

 

CAM  Global  News 社

シャーロックとジョンは、CAM Global News社へ。手紙を奪還するために32階のCAMの部屋に侵入する。そこへ行き着くまでには14段階のセキュリティーが張り巡られている。

 

エレベーターの前に立ち、CAMのフロアーに入れてほしいと、エレベーターに設置されたカメラの前で、ダイヤモンドの婚約指輪を見せるシャーロック。CAMの秘書はジャニーンだった。この厳重なセキュリティーを破り、CAMに近づくために、ジャニーンとの関係を築いたシャーロック。

ジャニーンは君を愛している、と非難するジョンにシャーロックはヒューマンエラーだと。

 

シャーロックが、CAMの部屋に入るとジャニーンが倒れている。シャーロックは、CAM の椅子の座席部分に手をあて、温度を測る。摂氏35度。犯人もマグヌセンもまだここに。椅子が暖かい。

 

シャーロックは、椅子の側で息を吸い込む。目を閉じて

VERSACE   

No.5

この香水はジャニーンのじゃない

PRADA

Dior

 

香水にも詳しいシャーロック。なぜかシャネルだけ品番だけど。

 

目をあけて

Clair-de-la-lune

 

シャーロック: なぜ知ってるんだろう

ジョン: メアリーがつけてる

シャーロック: いや、メアリーじゃない。他の誰かだ

 

上の階のペントハウスへ駆け上がったシャーロックに、CAM の声が聞こえてくる。

 

君の夫はどう思うかな。正直者で真っ当なイギリス人の夫が今の君を見たら何と?

真実を隠すためにこんなマネを?君の夫が望むと思うか?

 

Clair de la  Lune の香りの主がレディスモールウッドと思ったシャーロック。人を殺すなら香水を変えるべきです、レディスモールウッド、と呼びかける。振り返ったその人は、レディスモールウッドではなく。。

 

シャーロックは撃たれて意識を失う。

 

弾丸を受けたシャーロックが生きるためにマインドパレスが起動される。ここのシャーロックのマインドパレスは、美しくて哀しい。

マインドパレスの扉を開くのは、脳内アンダーソンと脳内モリー

 

なぜアンダーソン?

このブログでは省いてしまったが、 S2E3と S3E1との間の短編  Many   Happy   Returns  では、ただ一人シャーロックの生存を信じるアンダーソンが、あの事件もこの事件も解決したのはシャーロックだと主張して、レストレードに冷笑される。シャーロックに生きていてほしかったアンダーソン。ここで活躍できてよかったね。

 

銃の種類を考え始めたシャーロックに、

 

脳内マイクロフト:  お前はいつも馬鹿だった

がっかりだ

小さなシャーロック:  ぼくは馬鹿じゃない

マイクロフト: ママとパパも怒ってる

銃など問題ではない

殺された時、背後に何があった?

小さなシャーロック:  まだ殺されてないよ

 

 S3E1でも兄弟の会話の中にあったが、小さな時からシャーロックはマイクロフトにお前は馬鹿だ、と言われてきたのだろう。

繰り返される小さなシャーロックの映像。

 

シャーロック:  鏡が割れる音は聞こえなかった

つまり、弾は体内にある

モリー:  後ろに倒れなさい

 

倒れて痛みに痙攣するシャーロック。ショック状態にならないよう、マインドパレスの中に鎮静するものを探せとマイクロフト。

ここで、マイクロフト自身がマインドパレスと言っているので、 S2E2で言っていたのとはやや意味が違うが、マインドパレスは、過去の記憶の累積による深層心理という使い方に変わってきているように思う。

 

東風がやってくるぞ、君を捕まえに

 

East windが、ここで初めて出てくる。

 

シャーロックは、意識の下へ降りていく。そこにいたのは、マイクロフトが S3E2で覚えているか?と聞いた  Redbeard  赤ひげ、という名の小型のアイリッシュセッター。ショック状態からシャーロックを守る愛着の源だ。

 

シャーロックがおいで、というと、犬が近づいてくる。シャーロックは再び子どもの姿に。おいで僕だよ。可愛がっていたのだね。

また、シャーロックは大人の姿に。シャーロックは犬に顔をペロペロ舐められながら、

僕も今、死に追いやられそうだ、と。

They're  putting  me  down, too,now.

 

僕も、と言っているので  Redbeard  も死んだ、あるいは殺されたことがわかる。小さなシャーロックは、とても悲しかったのだろう。

 

痛みをコントロールしなくてはとモリーに言われ、シャーロックは再び階段を駆け降りる。一番深層にいたのは、モリアーティ。

 

モリアーティ:  怖がる必要はないんだよ。痛み、心の痛み、喪失、死、全て問題ない

おいでシャーロック、いいから死ねよ

死は最高さ。誰にも邪魔されない

 

甘美な死への誘い。シャーロックの心の一番深層にはモリアーティと、そして、死への誘いがあるのだろうか。誰にも邪魔されない自由な死への。

 

モリアーティ:  ジョンが心配だ。あの妻じゃね。彼を見捨てるんだね。危険にさらされているのに

 

この言葉をきいた瞬間、シャーロックは覚醒し、ジョンのために渾身の力を振り絞って意識の螺旋階段を、一段、また一段と登っていく。

 

シャーロック生還のために必要な言葉はたった一つ。"ジョン"

 

そして、うっすらと意識を取り戻したシャーロックが、声にもならない声でつぶやいたのは、  "メアリー"  だった。