この小さな窓の向こうに

BBC「シャーロック」にはまる日々。今は亡きナンシー関を思いながら感想を綴ります。

Sherlock S2E2-3

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バスカヴィル研究所cont.

「マインドパレス」がここで初登場。

シャーロックが突然ステープルトンとジョンにマインドパレスから出ていけ!と、怒鳴る。驚くステープルトンに、ジョンが、マインドパレスは、心の地図を用いた記憶術と説明。

 

シャーロックはヘンリーがいう  Liberty  と  inから、言葉をたぐり寄せる。 

 

Liberty :リバテイ・パターン、リバテイ百貨店、自由・平等・博愛、スーザの自由の鐘

 

in : 宿、インド、インゴルシュタットインジウム

 

hound :  リッジバッグ、ウルフハウンド、エルビスのハウンドドック

 

するとインデイアナ州リバティ

H.O.U.N.D.   が浮かぶ。

 

 

ここの画像が綺麗な上に遊び心いっぱいで楽しい。ベネディクトの瞳も綺麗だし。

 

Liberty,  In 、すなわち、インディアナ州リバティでCIAが行っていたのがプロジェクト・ハウンド。

詳細を調べるため、バリモアのPCから機密データにアクセスしようとパスワードを推測する。本棚に並んだ本からサッチャーに目星をつけるが、、Maggieはちょっと簡単すぎないか?軍のパスワードだから、数字とかもうちょっと複雑にしないかな?

 

内容は恐るべきものだった。人を暗示にかける新薬とそれを使った化学兵器の開発が目的。

 

この化学兵器は、薬剤噴霧によって恐怖をすりこみ暗示にかけるというもの。しかし、被験者にパラノイヤや殺人が多発し、1986年にプロジェクトは中止、情報は隠蔽された。

 

ハウンドは当時の主要チームメンバー5人の頭文字をとったものだった。シャーロックたちはプロジェクトのチームメンバーが揃いのトレーナーを着ている写真を見る。そのトレーナーには大きく魔犬の顔がプリントされている。魔犬の顔の下にはいくつかの文字。

 

その実験を、アメリカからイギリスに渡ってなお密かに20年間続けてきた人間がいた。

写真に写っていたのは若き日のフランクランド。アメリカに長くいたから携帯をセルフォンと呼ぶ習慣がぬけない。

 

Dewer's  Hollow

錯乱したヘンリーが銃をもって窪地へ。フランクランドの薬のため我を失って自殺しようとする。シャーロックはそれをとめようとして、真実を話す。

 

シャ-ロックの語り口が優しい。自分も同じように苦しんだからね。ヘンリーの混乱が理解できる。

 

僕らが魔犬を見たのは薬の幻覚作用

恐怖を刺激されて幻影を見たんだ

君が死ねば、人々は噂を信じるだろう

君の記憶が戻れば犯人は破滅する

君の正気を失わせ、変人扱いされるように仕向けたんだ

君が見たのは魔犬でも怪物でもなく、ガスマスクをつけた人間だった

着ていたのは魔犬が書かれたトレーナーで、H.O.U.N.D.  Liberty,  In  という文字が書かれていた

子どもだった君はその事実をうけとめきれず、違ったものに変換したんだ

 

ガスマスクをかぶったフランクランドが現れる。シャーロックがマスクをとると、そこにはモリアーティの顔が。シャ-ロックの深層の恐怖はモリアーテイ。

 

窪地の上から赤い目の魔犬が降りてくる。レストレードが銃を撃つがあたらずジョンがしとめる。さすが元軍人。

撃たれてそこに倒れていたのは魔犬ではなく普通の黒い犬だった。Innのオーナーは犬を殺していなかった。

 

フランクランドは地雷原に逃げ込み、運命を受け入れるように自爆する。

 

Innの前

翌朝。

ジョンにコーヒーをもってくるシャーロック。ほんのお詫び?

ここの会話がステキ。

 

シャーロック:やはり、犬を安楽死させていなか

ったな

ジョン:そうする気にならなかったのだろう

シャーロック:   わかるな   I  see.

ジョン:  いや、わからないだろ No, you  don't.

シャーロック:  いや、そんなことないさ No,  I  don't.  感情? Sentiment ?

ジョン:  だね!  Sentiment !

 

S2E1で、シャーロックがアイリーンに冷たく言い放った言葉。

 

Sentiment  is  a  chemical  defect  found  in  the losing  side.

感情は敗者に見られる化学的欠陥だ

 

この同じ言葉を、今、シャーロックが使う。昨晩は、凶器も現場も一度に判明、とはしゃいで、ジョンにタイミングが悪いと叱られたシャーロックだったが、前とはちょっと変わった。

 

ラボに閉じ込められた実験のことをジョンに問い詰められ、ごまかすシャーロック。

砂糖が原因と思っていたのは間違っていたとジョンに言われ、少し、としぶしぶ認める。

 

シャーロックはInnのオーナーのところに話にいく。

Gotta  see  a   man  about  a  dog.

犬が殺されてしまったオーナーに慰めの言葉をかけに行った。

少し優しいシャーロック。

 

なんでもないシーンのように見える、このInnの前の短いやりとり。S2E3へと続いている。

 

独房

モリアーティのアップ。

マイクロフトが彼を釈放しろと。

 壁一面にシャーロックの名前が。

これが遠大な計画の司法取引であったことは、ずっと後でわかる。

 

推理作品としてはまとまってはいるけれど、人を殺すという時に特徴のある目立つトレーナーを着るか?とか、甚大な結果ゆえ中止された計画が一段階の短いパスワードで見られるのか?とか結構、つっこみどころはあるような気がする。

だがいつも理路整然とあっという間に高速推理するシャーロックが、とまどい、動揺する、未完成なところを見られるのは嬉しい。完璧で失敗がなかったらつまらない。ほころびがあるから魅力となる。つかもうとして手からこぼれ落ちるものこそいとおしい。

 

私たちがなぜこのドラマシリーズのシャーロックにこんなに惹かれるのか、その秘密をゲィティスは、ここでこっそり教えてくれているような気がする。